【HQ】精神安定剤 【稲荷崎】

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北とAが登校する時間帯、バスの中はいつも貸し切り状態だった。それもそのはずだ、2人は何時も朝練に一番乗りなのだから。


今日も誰も乗っていないバスの中で、2人は肩を並べ隣同士で座っていた。リュックを抱え込むようにして顔を埋めているAは、既に夢の中だった。


北の落ち着く声のトーンに、心地よい体温。

それらに安心感を感じたAは、不安が取り除かれかのように良く眠っていた。


少し北の方に体重をかけながら寝ているが、彼はそれを不快なものだとは思っていなかった。

むしろ、癒しとでも思っているのではないだろうか。




心地いい揺れに、右半身に感じる温かい体温。

静かな車内で聞こえるのは、運転手のアナウンスの声と地面を走る音だけ。

心地いい他に、何もない。

この時間は、北の心休まる時間でもある。




なるべく起こさないように、Aの顔を覗き込む北の表情には、心配の色が浮かんでいた。

”予防”でつけているとは言っていたが、そんな噓はお見通しだった。









＿＿＿俺やったら、泣かせへんのに





小さく呟き軽く頭を撫でると、Aの表情が少し和らいだような感じがした。


不安に襲われ、寝ることがあまり出来なくなった今の彼女の心にとって、北の言葉は”デパス”のようだ。



＿＿＿

【デパス】

ベンゾジアゼピン系抗不安薬(短時間型)

抗不安作用に加え、催眠作用もある。(筋弛緩効果もある)

副作用→依存性

【2 エリスバン】→←ー

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