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彼氏に手を引かれ連れて来られたのは、呼び出し定番の体育館裏。倉庫や武道場が影となり、あまり人目につかない。それに、通る人も少ないのだ。
「ここなら、ゆっくり話せれるね……ねっ、A」
Aの腕を離し、ゆっくりゆっくりとAとの距離を縮めていく。
「っ…!…やだ…それ以上、近づかないで…っ…」
肌を駆け上るようにして現れる鳥肌に思わず身震いをし、後ろに後退りする。
だが、後退る距離にも限界があり、Aの背は体育館の壁に虚しくも着いてしまう。
「そんなに、怖がらないで。大丈夫、”何も” しないから」
Aの両肩を壁に貼りつけるように押さえつけられ、逃げようにも逃げられない状態になってしまう。
叫ぼうにも恐怖で声が出ず、もうどうする事も出来ない。ただただ、胸の奥底から混み上がってくる恐怖に耐えるのみ。
「まず、返信しなくてごめんね。 ショックで、何て送ったらいいか分からなくてさ」
嘘だ、嘘。
そんなの、嘘に決まってる。
だって今、”笑ってる” じゃないか。
彼氏の瞳に浮かぶのは、狂気の色のみ。
Aが昨日送った ”別れよう” という内容に、どうしても納得がいっていなかった。
何で、別れようと言ったの?
俺の事、嫌いになった?
あぁ、ひょっとして、バレー部の誰かに好きな人が出来た?
だから今朝、角名君とキスしてたの?
「納得いかないなぁ……そんなに俺を馬鹿にして、面白い? この、”尻軽女” が」
壁を拳で殴りつけた激しい音が耳元で鳴り、Aの肩が大きく跳ね上がる。
もう、何て言ったらいいか分からなかった。
本当の気持ちを言っても、彼はきっと信じない。
信じるどころか、疑って逆上するだけだろう。
そんな思いを表すかのように、Aの瞳からは静かに涙が零れ落ちる。
何時もそうだ。Aの気持ちを聞くどころか分かろうともせず、自分の気持ちだけを押し付ける。
今までどれだけ我慢し、苦しんできたか。誰もいないところで1人で泣き、傷ついていたAの気持ちが、彼には分かるのだろうか。
「泣かないでよ。てか、泣いて許されると思ってる? だから、お前みたいな女ってもんは___」
「何や。その続き、言うてみ」
泣くAを軽蔑する様な瞳で見下ろす彼氏の後ろから、非常に重たい圧がのしかかる。
静かだが、怒りが含まれた声。いつも陽気な声とは裏腹に、全身が固まりそうだった。
___あつ、む…
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ソラ(プロフ) - ami☆さん» 読んでくれてありがとぉぉ!! サイレースとパキシルね!話の途中でぶち込むね!丹精込めて書いてきます!! (2020年3月31日 23時) (レス) id: 4de741d4e7 (このIDを非表示/違反報告)
ami☆(プロフ) - ソラさん» リクエストします! サイレースとパキシルをモチーフにしたお話を読みたいです…!(ざっくりしててごめんね) お願いします! (2020年3月31日 17時) (レス) id: 8fb5979ada (このIDを非表示/違反報告)
ami☆(プロフ) - ソラさん» 凄く面白かったぁ! 頑張ってね! (2020年3月31日 17時) (レス) id: 8fb5979ada (このIDを非表示/違反報告)
ソラ(プロフ) - ami☆さん» amiちゃん!呼んでくれてありがと!ひょっと、思いついてね!亀更新だけど、がんばります! (2020年3月30日 12時) (レス) id: ab9ea58111 (このIDを非表示/違反報告)
ソラ(プロフ) - まーまーさん!読んでくださって、ありがとうございます!文字数を中々少なく出来なくて.......がんばって、少なくしてみます!アドバイス、ありがとうございます! (2020年3月30日 12時) (レス) id: ab9ea58111 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ソラ | 作者ホームページ:https://twitter.com/A5LKSPZiLYiWd6N?s=09
作成日時:2020年3月27日 18時