最強コンビ、ここにあり (ページ25)

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Aside

「うわ！」

「うっ！」

ロッカーの隙間から見えたのは、ボロボロになりながらも殴って阻止する伊藤くんの姿

そして、フラフラと歩きながら私の入っているロッカーに背を向けて少し凭れている

いつの間にか、目の前の状況に圧巻されすぎて

“伊藤”を見直したのか、呼び方が“伊藤くん”に変わっている私に自分でも驚きながら

辛うじて声に出す

『伊藤くん…』

「ハア、ハア…開けさせねえ、絶対開けさせねえ」

そういう伊藤くんは、まだツッパリになったばかりなのに意地があった

だけど伊藤くんはもうフラフラで

顔に血がたくさんついていたし、さすがに心配だ

「どけこら、マジでぶっ殺すぞ」

『もうやめて!!』

「てめえもこの女好きなんだろ、気に入ったんだろ

何で好きな女にこんな事すんだよ」

「好き？ッハ、甘っちょろいこと言ってんじゃねえ!!

俺はな、俺に舐め腐ったことをしたクソ女の京子をヤク中にしてやりたかったが

こいつが勝手に身代わりになっただけだ!!」

「てめえ…」

「いいから退け」

身代わりになったと聞いても、伊藤は更にロッカーに近づいて言った

「負けねえ」

少し前にツッパリになっただけのくせに、根性があるらしく。

その根性は捨てて私だけに被害が出れば、なんて思った

そんな私の目は情けなくも涙目で。

…でも、更に過酷なことが起きた

井上は地面にあった丈夫そうな木材を手に取り、伊藤くんの頭に殴りつけた

「ゔんっ!!」

「うわっ…ああ…」

何度も殴りつけられるが、伊藤くんは一向に退けないし避けない

地面に手をついても、すぐに起き上がってくる

「やっぱり、てめえみてえな奴にはぜってぇ負けねえ」

「どけっつってんだろ!!」

また、伊藤くんが殴られる…!!そう思った瞬間、煙のようなものが充満した

「うわ！」

「なんなんだ！こりゃ！」

すると、バタバタと足音がして、更に部屋に煙が放出される

「なんなんだ！これ！」

ヤクザたちの声を聞きながら、これはクスリではないのかと少し安心する

「なんだこりゃ！」

「見えねえ！」

そんな慌てた声と、安心なんて出来ないのに、なぜか安心しちゃうような声が聞こえた

「不意打ちクラ〜ッシュ!!!!」

ﾄﾞｻｯ

「うわ！あっ!!

何だ？てめえは」

気づけば私の目からは大粒の涙が流れていて

涙でぼやける視界の中心に、ロッカーの隙間から見える金髪が映し出された

「俺か？俺はAとコイツの相棒だよ」

『貴志…!!』