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しばらく降谷くんと車内で仕事の話をした。
降谷くんは仕事で一週間迎えには来れないらしく、代わりに彼の右腕こと風見さんが指定の場所に迎えに来てくれると言っていた。
降谷くんも大変なんだなぁ。なんて思いながら高速道路から見える景色はこの前見た時よりも、昨日よりもすっかり真っ暗になっていた。明かりがついているのはどれも自宅と看板ばかりだ。
窓の外を見ながら憂鬱に浸っていると突然目の前が真っ暗になったと思えば、降谷くんが私の顔の上で手のひらを擦り付けるように目元から下へとまるで拭くように押し付けてくるので思わず「ぶわ…っ!?」と色気のない声がこぼれてしまう。
「変なこと考えるな」
変なことって、…失礼な。でも何も言えなかった。降谷くんの言っていることは間違っていなかったから。
私は降谷くんの手を取ると私に突然変なことをしてきたせいで手の平に付いてしまった自分の付けていた色付きリップを指でゴシゴシと拭うとフロントシートの上に押し付けた。
「それももうやめてね…………くせだったから」
「それは悪かった」
そしてしばらく、静かな沈黙が続いた。
BGMのない車内はRX-7のエンジン音が響いている。少し生暖かな車内、小刻みに揺れるシート、ひとりではないという、降谷くんはいるという安心感からか、ゆっくりと無意識に瞼が閉じていく。
まずい、寝そう。
そう言えば今日、いつもよりちょっとお酒飲み過ぎてたから――そのせいかもしれない。
ふわふわと浮遊し出す意識の中私は降谷くんに問いかけた。
「ねていい?」
すると降谷くんはまた柔らかな声で「いいよ」と答えた。
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あすか@暇人(プロフ) - はじめまして!こちらのお話、愛読させていただいております!表紙絵最高…。前のも好きでしたけどこっちも最高です!これからも頑張ってください! (2022年8月1日 18時) (レス) id: f527377b10 (このIDを非表示/違反報告)
カリリン - とても、いいお話です! (2022年7月11日 21時) (レス) id: eb57079295 (このIDを非表示/違反報告)
カリリン - 続きが気になります。お願いします。 (2022年7月11日 21時) (レス) id: eb57079295 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:冬 磨 | 作成日時:2022年6月27日 17時