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「でも、あんまり調子に乗らせないようにね。なんかやらかしたら怒っていいから。あとこれ、動かしたらすぐ帰っていいよ、レンタル料金もあるでしょうし」
「ええ、ではお言葉に甘えて」
私はそう伝えるとすぐにトラクター後ろのシャーシへよじ登りボロボロで丸ごとドアの外れたRX-7運転席へ乗り込みキーを差し込んで回す。
流石に一回ではエンジンはかからず四、五回同じように繰り返せばガコンガシャンとものすごい音と振動と共にエンジンがかかる。申し訳ないが思わず吹き出しそうになってしまった。
動かせるということはガソリンタンクやハンドルに繋がる部品はある程度無事なんだろう。むしろ奇跡なくらいだ。
なんなら致命的になる傷だけ避けてある。随分器用なことだ。これはガソリン漏れで爆発でもしないと永遠にこのループを繰り返すに違いない。もういっそのこと爆発してもいいんだぞRX-7。
なんて本人に聞かれたら殺されるなと思いながら、バックでRX-7をキャリアカーから下ろしていく。丁度下ろしたタイミングで目の前のキャリアカーが動き出した。
大きくハンドルを切って出入口へと左折すると、ちょうど左右を確認するタイミング運転席にいる眼鏡の彼と目が合い、私が手を振ると一度会釈をして私道へと乗り出し降谷くん達はボロボロになったRX-7を置いて元来た道を帰って行った。
後部座席に置いてある丸ごと外れた運転席のドアの欠片を軽く確認して運転席から降りる。
そしてもう一度少し離れて真正面から降谷くんの愛車であるRX‐7を直視した。
降谷くんもRX‐7も命をかけ過ぎている。
でも、もしかしたら、ある意味運命共同体なのかも。
私の知っている車好きは口をそろえて相棒だの恋人だの言って綺麗に扱っているというのに。
よく世間一般では、モノへの扱い方は恋人への扱いと同じと聞いたことがある。ボロボロになったRX‐7を見ながら思わず乾いた笑いが漏れてしまう。
まさかね。でも、これだけ見たら絶対DV彼氏だ。乾いた笑いが快活な笑いへと変わっていく。
「お金と権力だけ持ち合わせた無慈悲な男で、ああいう扱いをする奴とはさっさと別れた方がいいよ?」
でも、冷静になって考えたら、どちらの気持ちも分かる気がした。
「まぁ、本当に嫌いだったら、あんな大金払って治しになんて来ないよね。………ツンデレってやつ?」
真っ白の塗装にハッキリとボンネットに刻まれた擦り傷をなぞりながら私はそう呟いた。
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ネイジェ - すごい、言葉に表せないくらい面白い!!更新頑張ってください! (2022年6月15日 19時) (レス) @page29 id: 17a7d13276 (このIDを非表示/違反報告)
ひゆめ(プロフ) - 凄く面白いです!!更新頑張ってください。 (2022年6月15日 12時) (レス) id: 141a54d8d9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:冬 磨 | 作成日時:2022年6月14日 23時