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『オッパー!休憩?トイレ行ってきてもいいー?』
顔に被せられたのがAのタオルなのだと気づいた。
反対の手で顔から取ると、目の前でにこにこ笑ってスニョンイヒョンに声をかけている。
「えーいホシヤ、あいつのトイレは嘘だよ」
ジョンハニヒョンが、ホシヒョンの肩に手を置いて言う。
「15分だけなー」
チラッとAの顔をみて、笑ったホシヒョンの笑顔は優しかった。
握られたままの手をじっと見つめていると、
「15分!?長すぎ」
『やったー!オッパ愛してる』
ジョンハニヒョンが不満そうな顔をしてる。
Aは嬉しそうに笑いながらも愛してる、を早口で言いもう背を向けてるからヒョンがその言い方なんだよ!と嘆いてた。
隣でディノが可笑しそうに笑った。
繋がれた手が温かい。
その瞬間にハッとして、ようやく息が吸えた気がした。
隣にいるAを見ていると唇をぎゅっと噛み締めてしまった。
なぜだか涙が出そうになったから。
なんでAが笑うだけで、話すだけで。
そこに居るだけで、こんなに優しい気持ちになるんだろう。
どうして。
みんなが笑顔になれるんだろう。
『さ、オッパ行こう』
ニコニコ笑って僕の背中を押すように歩き出すA。
「え?俺?」
『うん!一緒にー!』
チラッと後ろを振り返ると、床に座っていたウジヒョンと目があった。
ヒョンは小さく頷きながら手をあげた。
ウジヒョンの前にしゃがんでいたジスヒョンも僕を見て、小さく笑った。
ジスヒョンはなんであんなにかっこいいんだ。
ずっしりと重たかった心の中は、なぜか少し風が吹いて隙間ができたようだった。
ふいにヒョンの事を考えてしまったなんて、少し面白くて笑いそうになった。
そんな僕を隣で歩きながらじっと見ていたAは、嬉しそうだ。
『オッパ何笑ってるの?』
「俺笑ってる?」
『笑ってるよぉ。大丈夫』
Aは花のように笑うって、誰かが言ってた。
本当にそうだ。
Aの足はトイレには向いてない。
『あのね、ちょっと風に当たりたい』
エレベーターに俺を押し込んで、Aが押したボタンは最上階。
「トイレは?」
『あんなの嘘だよー』
『ハニオッパにはバレてたかなぁ』
そう言ってケラケラ笑ってる。
さっきまで鋭い目つきをして踊ってたAとは別人のようだ。
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作者名:蘭 | 作成日時:2021年12月5日 17時