うちのマンネは天真爛漫9

429.バーノン ページ29

『ボノニオッパ？』


きょとんとした顔で俺を見上げるAは、
出会ったあの頃よりも、もっと。
海外ツアーをしていた時よりも、少し。
大人びたように見えた。

キラキラと輝くメイクを施されて、
同じくらいキラキラしている衣装を着た俺達は。


今日も新曲披露のために番組に出演する。

同時期にカムバックした、他事務所のアイドル達で溢れかえるステージ裏。

久しぶりにみる顔ぶれもあって、
知り合いの多いスングァニなんかはあちこちで呼び止められている。


俺はAの細い肩に手を回して、そっとAを引き寄せた。
そんな俺の行動が珍しかったのか、不思議そうな顔をしてる。

別に意味なんてないけど……牽制
さっきからAを見つめる色んな視線から。
俺が、守りたかっただけ。
ミンギュヒョン、ドキョミヒョンから驚きの視線が送られてくるけどそれは知らんふり。


片眉を上げて頷いて見せたら、


『かっこいいね』

って、可笑しそうにAはクスクス笑った。
冗談だって分かってるのに、耳が赤くなった気がしたから、
耳を引っ張って誤魔化した。












Aが戻ってきてから発表した新曲。

ウジヒョンがAのレコーディング作業中、
ずっと微笑んでいたのを俺は見たし、
戻ってきたハードなスケジュールの中、短期間での振り写しも、
ヒョン達みんなどこか幸せそうだった。
くたくたになりながらも、やっぱり14人でいるべきなんだとホシヒョンが叫んでた。

そうだ、そうだと声が上がって照れたようなAが可愛かった。


そのあと少し困ったような顔をしたから、すかさずディノが
Aのほっぺを掴みに言ってて感心した。



Aの活動休止があって、
気づいた事が山のようにあった。
本当に沢山あった。
中でもグループとして、自分達の在り方をすごく考えた。

当たり前だけど当たり前じゃない。
俺たちが俺達でいる事は、奇跡なんかじゃない。
こうして今も14人で活動できるってことは。
ありきたりな言葉で言うなら、つまり。
奇跡なんかじゃ無くて運命なんだと。

怖かった。
Aが居なくなること。
それが当たり前になる事が。

けれど選んだのはやっぱり全員が同じ道を行く事。
それは、俺たちが自分たちで選びとった運命なんだって。

俺達、全員一緒ならなんだって出来るから。

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