349.ジョシュア ページ49
昔から綺麗なものを見ると胸が疼いた。
それが何故なのかは分からなかった。
Aに初めて出会った時。
男子だらけのこの練習室で、一際輝いて見えたのを覚えている。
努力をし、練習を惜しまず、明るくて、可愛くて、愛される。
いつも笑顔を絶やさない、そんな小さなAが眩しくて優しくて。
家族に感じるように、そして大切な仲間として。
好きになるのに時間なんてかからなかった。
僕が落ち込んでいたり、悩んでいたら
何も言わずに側にいてくれた。
本当に気がつけば自然に隣に居てくれたから、
弱音なんて吐くつもりなかったのに。
いつの間にか気持ちを吐き出してしまって、
何度も助けられた。
言葉の違い、文化の違い。
見えない壁に何度も阻まれた。
けれどAはすべてを肯定してくれた。
その空気が心地よくて。
息抜きだと、外にも連れ出してくれた。
年下の女の子に道案内されてるなんて、
間抜けもいいところだったけど。
そんな時間も幸せだった。
薄暗い地下で全てを費やす僕には、
Aが笑っていたらそれでよかった。
Aが居たらそれでよかった。
相変わらずAは可愛くて綺麗だった。
僕を見て顔を赤くするのも、照れたように笑うのも。
悔しそうな顔も、悲しい顔も。
散々守ってきてもらった僕だから、
これからは僕が守らないといけないって思った。
胸の中で芽生えた気持ちがなんなのか分からなくて、
ずっとむず痒かった。
Aが泣いていた。
デビューをして、何度目かの音楽番組の収録の時だったと思う。
収録終わりになかなか戻ってこないAを探しに楽屋を出た。
上手くいった撮影に気分は高揚していた。
けれどやっと見つけた妹の姿に血の気が引いた。
まさかと思って駆け下りた廊下の先で。
小さく蹲るようにして体を震わせていて。
駆け寄って顔を覗き込めば。
その両頬は赤く腫れ上がり、あんなに綺麗にセットされていた髪もまるで引っ張られたのか…めちゃくちゃだった。
『ジ、ジスオッパ…』
消えそうな声で僕を呼ぶその声に。
震えるその声に。
縋るように僕の腕を掴むその力の弱さに。
止まらない流れる涙に。
息を呑んだ。
Aが消えてしまいそうで、ぎゅっと抱き締めずにいられなかった。
ごめんなさいと謝るAに、胸が締め付けられるようで唇を噛んだ。
どうしてAが。俺たちのAが。俺のAが。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 824人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
らん(プロフ) - piさん» いつもコメントありがとうございます(;_;)リアルセブチちゃん達に魅了されて更新が滞っておりました。それでも見ていただいて嬉しいです。お礼を言うのはこちらの方です！ありがとうございます！！ (2022年6月1日 20時) (
レス) id: 7b16d9cf4f (このIDを非表示/違反報告)
pi - 更新嬉しいです〜（ ｉ _ ｉ ）ディノちゃんとのやり取りの可愛さにニヤニヤしていましたが、最新のスンチョルさんの破壊力がやばすぎまして、らん様の書く紅一点ちゃんの振り幅にぶん回されております（？）本当にありがとうございます.......長文失礼しました.... (2022年5月31日 0時) (レス) @page41 id: 60c22372dc (このIDを非表示/違反報告)
らん(プロフ) - piさん» お久しぶりです！お返事遅くなり申し訳ありません(/ _ ; )いつもありがとうございます♡♡スンチョルさんのキデキデが大好きで、言われてみたいセリフ盛りだくさんでキュンです。それがちょっとでも表現できていれば嬉しいです！ありがとうございます！ (2022年4月16日 20時) (レス) id: 7b16d9cf4f (このIDを非表示/違反報告)
pi - お久しぶりにコメントします！移行おめでとうございます！スンチョルさんエピめちゃくちゃ嬉しいです....；；ちょっとのすれ違い、、きゅんきゅん、いやぎゅんぎゅんしました、、、また更新楽しみにしてます！ (2022年4月13日 16時) (レス) @page18 id: 60c22372dc (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：蘭 | 作成日時：2022年4月4日 17時
