第二章*好き ページ9
「加州くん!どうし…もう夜遅いよ!?」
「仕事で忙しかったから待ってたんだ。約束、忘れたわけ?」
「いやいやいやそんなわけないよ!ほらほら、どうぞどうぞ!引っ越し早々で散らかってますが!」
「へへ、お邪魔しまーす」
机と段ボールだらけの部屋に可愛い男の子というあまりにもミスマッチな光景である。加州くんはいそいそと持ってきたマニキュアをことんと耳触りのいい音を立てながら置いていった。
「どこの爪が取れたんだったっけ?」
「ここ。折角だから主に塗ってほしいなぁって」
そう言って加州くんが差し出してきたのは左手だった。よく見ると左手の薬指の爪先が少しだけ取れてしまっていた。
頼まれたからにはやるしかない、と赤のマニキュアをキュポンと開けてゆっくり塗っていく。いくら私が美術を習っているといっても、ネイルなんてやったことがないからはみ出ないように、慎重にゆっくりと塗っていく。
「ゼェ、ハヒ、ど、どうかな…!?」
「爪一本で死にかけてる!?ちょっと大丈夫!!?」
「だ、だいじょぶ……こんなに可愛い加州くんの可愛くなれるお手伝いができて、すっごく嬉しいよ。」
どうもありがとう、と心からのお礼を伝えると、爪紅の色よりも真っ赤にした顔で自分の爪を見つめていた。
「でも他の爪と比べたらちょっとブレてるなぁ……塗り直すから、除光液借り、」
「だ、だめッ!!」
腕を掴まれ、勢いのあまり机上のマニキュアが倒れてしまう。かろうじて蓋は閉じていたからよかった。だけど目の前の加州くんはマニキュアの方には見向きもしていない。
「加州くん、あの、」
「俺、俺ね、主に言いたいことがあるんだ」
私だけを見つめていて、その瞳の奥の熱に心臓が跳ねてしまう。握られた手が震えているのが伝わってきて、彼がすごく緊張しているのだって、気づいてる。
この顔をしている弟は、いつだって大好きな人に向けていたから。
.
「主のことが、好きです。俺と付き合ってください。」
生まれて初めて告白された。
しかも、こんなに素敵な男子からの告白。
すっっっっっごく、嬉しい……ッ!!!
これが、これが告白……!嬉しすぎて今ならキリマンジャロでアップダウン五周できちゃいそう……!!
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「あ、ありがとう。あの、加州く、」
「ちょっと待ったァ!!!!!」
「ワァッ!?!?」
スパーーーーーーン!!と襖の音が景気よく開かれた。
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プスメラウィッチ(プロフ) - 初めまして、続きの更新頑張って下さい。応援してます。 (4月29日 23時) (レス) @page12 id: b10205217f (このIDを非表示/違反報告)
みさまるたろう - はじめまして‼︎ボクは個人的に脇差のみんなでわちゃわちゃしてて欲しいです……! (2月5日 0時) (レス) @page12 id: 1b4cf196fc (このIDを非表示/違反報告)
無音(プロフ) - 坦々麺さん» 大倶利伽羅と縁側デート…!?そんな、そんなの可愛いじゃないですか!!!!!いつになるかは未定ですが、書きたいです!お楽しみにしていてください! (1月28日 23時) (レス) @page9 id: a986d97cd1 (このIDを非表示/違反報告)
坦々麺(プロフ) - すっごい好き…めちゃくちゃ好き…最高です…!!個人的に大倶利伽羅を追加してくれると嬉しいです。縁側に座って2人で猫ちゃんと戯れている姿が見たいッ! (1月28日 21時) (レス) @page7 id: 14a944a4f2 (このIDを非表示/違反報告)
無音(プロフ) - こだぬきさん» ありがとうございます!彼氏候補が出るのをお楽しみにしていてくださいね〜! (1月28日 3時) (レス) id: a986d97cd1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:無音 | 作成日時:2024年1月27日 0時