重く苦く醜い ページ18
暫しの休憩を主から言い渡された一期一振は、早足で洗面所に向かっていた。早くこの頭を冷やさねば見習い、ひいては主に何をしでかすか分からなかったのだ。
刀として何百年生きてきたと言えど、あの時に心なんてものは必要なかった。
何かを慈しむ気持ちも誰かを愛おしいと思う気持ちも無く、空っぽな物だったのに今現在は人の身と共に心も得てしまったせいで、何も上手くいかない。
見習いに掛けられた綺麗という言葉に嫉妬してしまうなんて。
嗚呼、ままならない。
どうしてこうも思考と言動が一致しないのか。
冷静さを保とうとすればする程体が勝手に動いてしまう。これは刀派の長としても本来の一期一振としてもあってはならぬ事だ。
主殿のお手を煩わせるような事は、あの時から二度としないと誓ったのに。彼女はそれでもまた自分達の助けになりたいといつものように困った顔で笑うものだから、寄りかかりたくなってしまう。
｢(……そこも愛しいと感じるが)」
情けないほど惚れ込んでしまっている自分に嫌気がさす。
この感情を知らない時に戻れればどれだけ楽だろうかと考えたのは、今日が初めてでは無い。
彼女に出会って間違いなく自分の世界は輝き出した。今までなんとも思ってなかった花の色も、空の色も、雨の匂いも。彼女がいる世界なら全てが特別に見える。
人はこれを、恋という。
こんなにも重くて苦くて醜い感情を、恋などというのだ。
｢お前も難儀だな、一期」
｢……鶯丸殿、いつからそこに」
その問いに鶯丸は答えることなく｢主のことだろう？」といきなり確信づいてきた。思わず歪んでしまう表情を見てか、鶯丸は面白そうに笑う。
｢俺達の主は鈍感だからなぁ。大包平といい勝負をするだろう」
｢それだけを言うために着いてきたのですか？」
｢これでもお前を心配してるんだ」
｢……はは、相変わらず食えない人ですな」
何かと縁が深い彼の言葉に自然と笑みが零れる。
張り詰めていた気が緩んでいく感覚に目を伏せると同時に、彼女を愛おしいと思う感情はどうやっても捨てきれないのだと、少しだけ泣きたくなった。
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奏(プロフ) - 見習いそうきたかぁ…。最近読み始めたんですが面白くて一気に最新話まで読み切ってしまいました...！続きが楽しみです、更新待ってます！！！ (3月5日 13時) (
レス) id: 872e19f483 (このIDを非表示/違反報告)
にゃーちゃん - 鶴丸ぅ…おま、お前…てぇてぇ過ぎるだろ!!!!(クソデカボイス)見習いさんがどう行動起こすのか楽しみです…!!更新頑張って下さい。楽しみにしてます！ (5月9日 21時) (レス) @page16 id: fd6863f2a6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：-naki-
| 作成日時：2023年4月28日 19時
