五十三話 ページ22
薬研said
重苦しい空気が部屋を満たしている。
担ぎ込まれた鶴丸国永は大将の手入れのかいあってか今は傷もなく、穏やかな表情で眠っていた。
その傍らに座った大将はかれこれ十数分の間無言だった。
何を言うべきか色々考えてはみたが、結局どれも違う気がして何も言えていない。
大将がこの刀と話をすると言ったとき、反射的に付き添いを名乗り出たのは他ならぬ自分だったがどうにもこれではやりずらい…そう思ったとき、ぽつりと大将が声を発した。
「…私が今何を考えてるか、わかる？」
薬「…早く事情を聞きたい、とかか？」
少し迷って俺はそう答えた。だが、返ってきたのは違う言葉だった。
「…怖いの」
薬「…？」
「もしも、あの場所を出てきたからあんな状態になってたんだとしたら…あの人たちがどうなってしまうのか、凄く、怖い」
震えるその言葉に答える術を、俺っちは知らなかった。
多分、この優しい主の中では今、様々な思いが渦巻いているのだろう。
拐われたあいつらが果たして無事に戻って来るのか、とか。それで最悪の結末になるならいっそ、自分のことなど忘れてくれ、とか。
あるいは、あんな酷い状態で倒れていた刀を見て、その心配より先に自分の大切な存在の心配をしてしまったという自責の思いか。
そんなことを気にしているのならどれもお門違いだ、とは思うが生憎人の心は読めない。
…例えばあの卑屈詐欺の初期刀ならこんなときなんと言うのだろうか。
考えてかぶりをふる。今ここにあいつらはいない。なら俺は、俺のやり方を貫くべきだ。
そう結論付けたとき、再び大将の声が聞こえた。
「…鶴丸はね、出陣の時に切国が見つけてきたの」
ぽつぽつと大将はそのことを語った。
「他の本丸の鶴丸は驚きをもたらす事が好きみたいなんだけどね、この鶴丸は全然違ったの」
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七味 - 凄く面白かったです！！ブラック本丸ネタでこんなに面白い作品はじめて！続きが気になります。更新頑張ってください！ (2019年6月5日 7時) (
レス) id: fbf27e6ba4 (このIDを非表示/違反報告)
ライラック - 盲亀さん» ありがとうございます！がんばります！ (2018年5月16日 20時) (レス) id: 75a1a6830c (このIDを非表示/違反報告)
盲亀 - 鶴さんとってもかっこいいです！！更新頑張ってください。楽しみにしてます！ (2018年5月15日 17時) (レス) id: 71e9f65bc5 (このIDを非表示/違反報告)
ライラック - 睦月乃さん» ありがとうございます！鶴丸国永の歴史を聞いてたぎった勢いで書いたので…こんな鶴さんもありかなー…という妄想ですw (2018年5月8日 19時) (レス) id: 75a1a6830c (このIDを非表示/違反報告)
ライラック - ミリアさん» コメントありがとうございます、頑張ります！コラボも楽しそうですね…！ (2018年5月8日 19時) (レス) id: 75a1a6830c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ライラック | 作成日時：2018年3月7日 12時
