四十話 ページ2
No said
薬「…大将」
うずくまる小さな背中に薬研が声をかける。
「……」
薬「敵兵は逃げたのを除けば全員切った。…ただ、刀剣男子の行方はわからなかった」
悔しそうな、或いは悲しそうな顔で薬研はでも、と呟く。
薬「きっと、あれは…」
「わかってる。…わかってるよ」
響いたのは弱々しい小さな声。
当然か、と薬研は思う。
一度ならず、二度までもかつて信じた奴らに裏切られたのだから。
だが、いつまでも落ち込んでいられるわけにもいかない。
彼女はこの本丸の主でもある。
だから。
薬「大将。仮定の話として聞いてくれ」
選択肢についての話だ、と言う。
薬「ひとつ。このままあいつらの事を諦めるか」
「……」
薬「ふたつ。あいつらを信じて帰ってくるのをひたすら待つか」
みっつ、と指を3本立て薬研が言う。
薬「無理矢理にでも奪い返すか」
しん、と部屋が静まり返る。
信じた所であの心愛のことだ。あらゆる手段で妨害してくるだろう。
だとすれば奪い返すか。カンストしたたくさんの刀と大量の刀装兵がひしめくあの本丸の中、たった一ヶ月しか経っていない刀たちだけで？
不可能だ、とAは思う。曲がりなりにも自分が育てた刀達だ。その強さは痛いほど知っている、
第一、皆にそんなことはさせられない。
薬「諦めるか？」
冬の湖のように静かな瞳で薬研は尋ねる。
Aはいなくなった刀達の事を思い浮かべた。
優しい人たち。大好きな人たち。信じてくれた人たち。
「…だ…」
ぽとりと畳に水滴が落ちる。
「嫌だ…嫌だよ…諦めたくなんかない…っ」
涙とともにこぼれ落ちたのは久方ぶりに吐き出した彼女の本音だった。
その答えを受け止め、薬研は笑った。
薬「なら、大将」
最初からわかっていたのだ。先の３つではどれを選んでも主は幸せになれないと。
主には幸せでいてほしいと思う程度には薬研もAの刀だった。
だから。
薬「第四の選択肢だ」
かつて主君の腹を切り裂かなかった短刀は、そう言って不敵に笑った。
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七味 - 凄く面白かったです！！ブラック本丸ネタでこんなに面白い作品はじめて！続きが気になります。更新頑張ってください！ (2019年6月5日 7時) (
レス) id: fbf27e6ba4 (このIDを非表示/違反報告)
ライラック - 盲亀さん» ありがとうございます！がんばります！ (2018年5月16日 20時) (レス) id: 75a1a6830c (このIDを非表示/違反報告)
盲亀 - 鶴さんとってもかっこいいです！！更新頑張ってください。楽しみにしてます！ (2018年5月15日 17時) (レス) id: 71e9f65bc5 (このIDを非表示/違反報告)
ライラック - 睦月乃さん» ありがとうございます！鶴丸国永の歴史を聞いてたぎった勢いで書いたので…こんな鶴さんもありかなー…という妄想ですw (2018年5月8日 19時) (レス) id: 75a1a6830c (このIDを非表示/違反報告)
ライラック - ミリアさん» コメントありがとうございます、頑張ります！コラボも楽しそうですね…！ (2018年5月8日 19時) (レス) id: 75a1a6830c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ライラック | 作成日時：2018年3月7日 12時
