第十七話 橙side ページ18
…風呂から上がった時、Aは膝を抱えて顔を埋めていた。
泣いているのかと聞くと「眠いだけ」と言って、欠伸をしていた。
…何かあると思ったけど、そこに関しては何も触れず俺は夜ご飯を作った。
て「夜ご飯…作ったよ?」
『食べる!…いただきます』
て「おう。口に合うか分からないけどな」
『…美味しい!…っ!』
て「どうした?!」
『あ、頭が…何か思い出すかも…あ…』
て「Aー!」
『どうしたのてっちゃん?』
て「俺、家庭科で料理作ったんだけどAに食べてほしくてこっそりタッパーに詰めて持ってきた!」
『何やってんだか!』
て「いいから!食べて食べて!」
『いただきまーす…。ん!美味すぎる』
て「まじ!?やったぁ」
『てっちゃんの料理好きだわ』
て「結婚したら沢山食べさせてやるよ」
『本当に〜?じゃ考えておこうかなぁ』
て「本当かよww」
貴方side
『…』
て「A?」
『今、少し思い出した。高校生のいつか、部活の時にてっちゃんが、家庭科で作った料理を持ってきてくれた時の事が蘇った』
て「あー覚えてる。確か結婚したら食べさせてやるみたいな事言ったよな」
『うん…。もしかしたら、過去と同じ経験をしたら思い出すのかも』
て「なら、告白された場所に行けば何か思い出すんじゃ!?」
『…それはダメ』
て「え?」
『てっちゃん達に発見された時、私は告白された場所に近いところにいた。その時ものすごい過呼吸に襲われた。もし行ったとしても…何があるか分からないから怖い。それに…』
て「それに?」
『…いやなんでもないや』
て「そうか?じゃあ辞めとくか」
『うん』
本当は、何があるかなんて全然怖くない。でも、今の少しずつ慣れたこの関係が突然崩れる事が、過去を知る事が怖いのだ。
…何があるかなんてわからない。
もちろん、約束をした人を思い出すために来たから必ず行かないといけないけど、まだその準備ができてない…。
て「何か考えてるなら、言えよ?」
『うん…。大丈夫』
て「本当かよ?だってお前…今泣いてるぞ?」
『え?』
私は頬にそっと手を置いてみる。
…濡れている。
『あれ…本当だ…。な、なんでだろ…』
て「…好きな人が何かで泣いてるなんて見捨てれない。お節介かもしれない。でも話して欲しいんだ。Aの力になりたい」
…前にも同じことを聞いた気がする。
この人は、運命の約束をした“気が”する。
私は、少しだけ自分の恐怖をてっちゃんに話した。
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作者名:おとーふ 二号 | 作成日時:2020年6月4日 14時