夕立ちに手を叩け (ページ5)

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涙を拭い終わり気持ちを切り替えて戻ると
君は眉を下げて安楽死、というワードを出した。

これ以上俺にどうしろと言うのだろうか。
君が寿命宣言されたことだけで
もう手一杯だというのに。

そんな気持ちを知ってか知らずか
安楽死に対する気持ちを話し始めた。
その中でも、1番涙腺を再び緩ませたのは

" 君と笑って死にたい "

(ああ、本当に君はずるいな)

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それから、時間は早かった。
秒で時間が進んでいって、タイムリミットまでは１ヶ月に迫る。

病院も、双方の両親も力を貸してくれて
もう、いつでも打つ事が出来る準備が整ってしまった。

「あと、30日間、だね」

「あー、人生楽しかった」

「まだ、終わってないだろ？」

( 少し窶(やつ)れてきた？ )

数週間前までの肌とは違った。
あんなに綺麗な肌だったのに。
これも、進行が進んでる原因なのだろうか。

林檎でも、剥こう。
君が大好きだと語る真っ赤な林檎を手に取った。

小さい丸椅子に座り、見舞い品のバスケットには
林檎や苺、お菓子のグミや飴までもあって
子供らしいレパートリーだった。

小さく切った林檎を皿にのせて渡すと
彼女は爪楊枝で食べようとした。

そう、食べようとしたんだ。