【文スト】組合やめて探偵社員になりました！

＊人生万事塞翁が虎７ ページ10

ガタンッ

大きな音と共に、敦君は真っ青な顔で椅子から立ち上がった。

「ぼ、ぼぼ、僕はこれで失礼します。」

「待て。」

逃げ出そうとした敦君の洋服を掴んだのは国木田さん。
そしてしゃかしゃかと両手を動かしている敦君。

……可愛い。

「む…無理だ！奴＿＿奴に人が敵うわけない！」

「敦君、虎を知っているの？」

「あいつは僕を狙ってる！殺されかけたんだ！この辺に出たんなら早く逃げないと＿＿＿。」

すると国木田さんが敦君の服を離したと思うと、ガッと床に倒した。

痛そ…

「云っただろう。武装探偵社は荒事専門だと。茶漬け代は腕一本か、もしくは全て話すかだな。」

さらに腕をぐいと曲げる国木田さんを太宰さんが止めに入った。

「まぁまぁ、国木田君。君がやると情報収集が尋問になる。」

「そうですよ。社長にいつも言われてるじゃないですか。」

「…ふん。」

見せ物ではない、と国木田さんが周りに行っている間に、私と太宰さんは敦君に話を聞いた。

「それで？」

「…うちの孤児院はあの虎にぶっ壊されたんです。畑も荒らされ、倉も吹き飛ばされて＿。
死人こそでなかったけど貧乏孤児院がそれで立ち行かなくなって、口べらしに追い出された。」

辛いことを思い出しているのか、うつむきながら話す敦君。

「…そりゃ、災難だったね。」

空気が重くなる。

「それで小僧。」

まぁ、国木田さんはお構いなしに…

「殺されかけた、というのは？」

こうやって聞くわけなのだが。

「あの人食い虎＿＿。孤児院で畑の大根食ってればいいのに、ここまで僕を追いかけてきたんだ！」

ドッと机を叩く敦君は怒鳴った。

「あいつ僕を追って街まで降りてきたんだ！空腹で頭は朦朧とするし、どこをどう逃げたのか…。」

＿＿何かおかしい。考えすぎかな？

「敦君、それっていつの話なの？」

「えっと、院を出たのが２週間前、川であいつを見たのが４日前です。」

「確かに、虎の被害は２週間前からこっちに集中している。それに４日前に鶴見川で虎の目撃証言もある。」

ちらりと太宰さんの様子を伺ってみると何やら黙って考えている。太宰さんは中々頭がキレるので、この様子を見る限り私の考えはあながち間違ってはいなさそうだ。

すると、黙っていた太宰さんが唐突に口を開いた。

「敦君、これから暇？」

「…猛烈に嫌な予感がするのですが。」

「君が『人食い虎』に襲われているなら好都合だよね。」



「虎探しを、手伝ってくれないかな。」

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