【短編集】君と過ごしていたい

蜂蜜よりも甘い【常磐ソウゴ／ジオウ】 ページ2

1階からいい匂いがしてきてぼんやりと目が覚める。クジゴジ堂に住むようになって早半年、私の胃はすっかり順一郎さんの手料理に掴まれており食が細かった私も今ではよくご飯を食べるようになった。私はこれだけでもクジゴジ堂に来てよかったと思っているけれど、もうひとつ心から良かったと思っていることがある。それは、寝起きや寝る前のソウゴくんを見れることだ。中学に入学してすぐソウゴくんを好きになって、高校だってソウゴくんと同じところに入った。本当なら引っ越して引越し先の高校に入学する予定だったけど、クジゴジ堂の部屋を借りれることになったので高校はソウゴくんと同じ所にした。大好きな人が毎日おはようって言ってくれて、おやすみって言ってくれる。こんなに幸せなことは無いと思う。もうなんなら私は時計職人になってこのクジゴジ堂を継ぎたいぐらいだ。そんなことを考えているうちに身支度が終わりやっと下に行ける。階段をおりていくと今日はお休みの日だからかなんとふわふわのパンケーキらしい。ふわふわの2段重ねパンケーキにカリカリのベーコン、一緒に出されたサラダも瑞々しくて美味しそう。
｢今日も美味しそうですね！｣
いつも通り順一郎さんに声をかけて、ツクヨミちゃんとゲイツくんにおはようって言って朝ごはんを食べる。ひと口、と口に入れようとしたら後ろからソウゴくんの声がした。
｢おはよ〜……あ、今日パンケーキだ〜｣
いつもの3倍ぐらいふわふわした雰囲気のソウゴくんがにこにこと声をかけてくれる。にやけてしまわないように気を付けながら私もおはよう、と返して朝ごはんに戻る。緊張してしまいソウゴくんとお喋りをすることは少ない、本当は沢山お話したいけど、近くに居れるから今は満足。私はたっぷりの蜂蜜が掛けられたパンケーキを口に入れてじゅわっと染み出す蜂蜜ととろけるパンケーキの感触に舌鼓を打つ。はぁ…こんなに美味しいパンケーキはお店にもない。目の前に座るソウゴくんの笑顔も眩しくて、今日は最高の一日が始まる気すらする。あんまり見ていると片思いなのがバレちゃいそうだからパンケーキに集中する。半分ぐらい食べた所でなんだか視線を感じて目線をあげると、ソウゴくんとバッチリ目が合った。
｢かわいいね｣
ソウゴくんから発せられた言葉に固まってしまう。
｢Aちゃん、甘いもの好きだよね。今日デートしよっか｣
唐突すぎる発言に私は頷く事しかできない。ソウゴくんの目線が甘くて溶けてしまいそうだから

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