【短編集】君と過ごしていたい

ティータイムは特別に【常磐ソウゴ／ジオウ】 ページ1

冬の足音がすぐそこに来ている今日この頃、吹く風は冷たくて暖かいものが欲しくなる。

私は今常磐くん……常磐ソウゴくんのおうちでもあるクジゴジ堂で念入りにもてなされていた。ちょっと丁寧過ぎるぐらいのおもてなしの経緯は簡単で、高校入学記念に貰った腕時計を壊してしまい困っていた所を偶然常磐くんに見つかり、お家が時計屋さんだからと修理の為に連れてきてもらっただけなのだが、どうやら常磐くんの大叔父さんは普段時計の修理よりも他のものばかり修理しているらしく…時計を持ち込んだ事と常磐くんが私を連れてきたことで何故か盛り上がってしまったらしい。私は常磐くんのことをほとんど知らないけれど、いい人なんだと思う。いつも王様になりたがっていて不思議な人だと思うけど。
常磐くんの大叔父さんが入れてくれた紅茶を飲みながらちょっとばかりいたたまれない気持ちになる。目の前でアップルパイを食べている常磐くんは何だかとても絵になる様子だし、たかが時計の修理でこんなに丁寧におもてなしされているのも、いたたまれない気持ちにさせてくる。
｢美味しくなかった？｣
常磐くんの目が全く減らない私のアップルパイに注がれてこてん何て音がしそうな首の傾げ方をして問い掛けてくる。そんな事しても絵になるんだから、イケメンってずるい。
｢ううん、私こんなにおもてなししてもらうようなことしてないのにいいのかなって｣
｢いいよ？だって俺が大叔父さんにお願いしたんだ。Aちゃんと二人で話しがしたいって｣
そんなことを言われると私もちょっとどきどきしてしまう。きっと常磐くんは何か思うところがあって私を選んだだけだと思うんだけど、ちょっぴり期待してしまう。心做しかこっちを見つめる目が甘いような気がしてくる。
｢えっと、私何かあるかな…？｣
｢可愛いなぁって。Aちゃんの事ずっと知りたかったから｣
｢えっ…｣
｢ねぇ、紅茶飲み終わるまででいいからさ、俺と話してて？｣
どうやら私のティータイムは少し特別なものになるようです。

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