8.沸々 ページ8
陽の当たらない研究室。それが私の居場所。家なんて大層なものは無いし、家族なんて暖かいものもない。 有ると云えるのは私に利用価値を見いだして操ってると、思ってるお莫迦さんくらいかな…
「Aです。ただいま戻りました」
「ああ。標的は見つかったか」
回転椅子にどっかりと座っているDr。本名は知らない。ドクターって呼べって云われただけだから気にもしてない。
__私はこの人が嫌いだ。大っ嫌いだ。
この人が私を拾って、私の人生をぐちゃぐちゃにしていったから。
「はい。鶴見の路地裏で発見しました。
様子見の段階だった為、手は出していません」
「そうか… あの番犬俺らにゃあ邪魔臭いからな…
ところで、身体の具合はどうだ。この前、お前血ぃ吐いてただろ。無事か?」
(__余計なお世話)
「大丈夫です。問題有りません」
「そうか。なら好い」
__何が[なら好い]の?時々目の前が霞むのに。走馬灯みたいに意識が飛ぶのに。死神が遊んでいるみたいに、歯車が見えるのに。
__何が[無事か?]なの?壊しているのは貴方達だ。巫山戯るな。
足を引きずり、檻の中の硬いベッドに座る。醜いのDr.の顔が闇に隠れて見えないのは幸運だった。そうじゃなかったら気分が悪くなって血流も悪くなる。
「もう寝よう」
その前に、とポケットから紙を出すとビリビリに破る。小さい抵抗のつもりだ。私を鎖で繋いで飼い慣らせると思わないでよ。
「おやすみなさい」
外はまだ明るくて鴉がカァカァと鳴いている。あの夕焼けの様に幻想的で楽しい夢が見れますようにと祈った後、すぐさま目を閉じた。
瞳の裏で、歯車が回った気がした。
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玉槻七海 - 中原三日月さん» 閲覧に感想、ありがとうございます!更新頑張ります! (2019年2月16日 15時) (レス) id: 0aa4805012 (このIDを非表示/違反報告)
中原三日月(プロフ) - 運命とは、いかに残酷なのでしょうね……と考えさせられました。更新頑張ってください!応援してます! (2019年2月13日 5時) (レス) id: f8510eae2e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:玉槻 | 作成日時:2018年12月29日 15時