19.橙色 ページ19
琥珀色の夕暮。烏が鳴き始め、人も慌ただしく家に帰る時間帯。
橙の空には不釣り合いな白い帽子のつばを摘んで歩く。家ともいえない歪な居場所に向かって歩く。 作戦決行は3日後にまで迫っている。
…一週間後、又ここを歩いていられるのかなぁ。
限りなく NO が帰ってくる疑問をぼんやりと考える。何も考えたくない、微温湯に浸かっていたい気分。
「おい！もう帰る時間だぜ！」
「まだ明りーからいじゃねぇか！」
「うちは母ちゃんが煩いんだよ！」
「そうだよ。ハヤトの言う通りだ。それに云うでしょ？“カラスが鳴くから帰ろ”って」
「確かにカラス、鳴いてんな」
「ほら、帰んぞ」
三人の少年が夕闇を背景に駆けていく。
その背中は純粋で無垢で、昔の私たちみたいで…
いけないいけない。最近涙腺が緩いな。つばを掴んで目元を隠すと視界の隅に映った、虚像の真っ直ぐな黒髪と白い顔。
…このさらさらな髪、知ってる＿＿。
…真逆。
ドクンと波打つ心臓。もし声をかけられでもしたら… 心が揺らぐ。グラグラ揺れて躊躇ってしまう。＿＿駄目、離れなきゃ。
早足でコンクリートを蹴る。目は人混みを見据える。私の耳はガヤガヤと人の声が劈くように入ってくる。だから……
だから、誰かが棒立ちしている気配と、果物の落下音なんて知らない。むせ返るほど熟した果実の匂いなんて知らない。
見ていない。聞いていない。知らない。
白髪紅目の異端な私は、同じ様な顔の広がる背景に紛れ、背景の一部となった。
鏡に映った 銀の姿に涙を流しながら。
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玉槻七海 - 中原三日月さん» 閲覧に感想、ありがとうございます！更新頑張ります！ (2019年2月16日 15時) (
レス) id: 0aa4805012 (このIDを非表示/違反報告)
中原三日月(プロフ) - 運命とは、いかに残酷なのでしょうね……と考えさせられました。更新頑張ってください！応援してます！ (2019年2月13日 5時) (レス) id: f8510eae2e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：玉槻 | 作成日時：2018年12月29日 15時
