りゅー君【文スト】

2.離別 ページ2

この貧困街で生き抜くことは容易じゃない。 少ない食料、汚い水、息を吸う度痛くなる肺。そして一日に一度は見かける亡骸。



それに加えて、最近は流行病が私たちを苦しめている。貧困街の外へ続く扉は閉まっている。臭いものには蓋をした状態だ。 その所為で大人になれなかった子供は多々いる。


それでも…Aは誓いを立てた。








｢判った、誓おう｣

｢うん｣




無論私達の反対の意は無い。元々死ぬ気なんてないから。






誓いの印にAは頬に、兄さんは鎖骨に、私は額に切り傷を付けた。忘れない為にね。





｢乗り越えよう…三人で！｣


本当の苦を知らなかった彼女の無邪気な声がこだました。









その日の夜、兄は包帯だらけの悪魔に会った。温度のない彼に、為す術もなくマフィアに連れていかれ、約束は容易く破られた。




Aとの約束は破られ、Aの消息さえ解らなくなった。





マフィアに入って数年経った今でも、少ない睡眠時間の夢の中で、少女の声は響いている。

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