『客人なら歓迎するけどそれ以外はお断り』 ページ4
八尋寧々は源先輩に鱗を使わなかった。否、使えなかった。故に人魚の呪いにより、魚姿で水槽に入っている。
「私の願いはそんなものだったんだ」と泡と涙が水槽の中を震わせた途端、選択教室の床が揺れる。
《さても さても》《ヒトとはまっこと愚かな生き物よ》と人を卑下しながら室内に現れたのは、ヤシロ曰く人面魚、眷属を迎えに来た人魚であった。
「営業妨害だ」と呟いた七番目のトイレの花子さんは人魚の鋭い
side__八尋寧々
「…え」
『うわっ …と危ないですね。怪我はありませんか?七番目』
「えっ!」
飛んでいった花子さんを誰かが抱えている。
切りそろえられた前髪に日本人形みたいに整ったあどけない顔…それに着物…?
《お主…!何奴!》
『えーっと貴女は…ああ!人魚ですか!まさか君達、人魚の鱗を使ってこのような事態に…』
花子さんを下ろして、下を向き髪をくしゃくしゃとしだした女の子。
《妾の問に応えよ!》
人魚が怒って花子さんにやったように尾鰭を振るった。驚いた事に女の子は無言で尾鰭を掴んじゃった!
『この学園の学校童子のカモメです。どうぞ宜しく』
凛とした声でそう応えたかと思うと人魚の尾鰭をぱっと離した。そうすると人魚は彼女を嘲り笑った。
《学校童子?…学校童子っ!たかが学び舎の守り人が千歳を生きる妾に歯向かうか!》
再び鰭を向けてくる人魚に、彼女は言った。
『まあ、お待ちください。争いごとは好まないんです。それに、七番目は未だその子の願いを叶えておりません。私、学校童子は学校を守る者。生徒は言わずもがなその対象でございます。そしてお話がもう1つ。
ここは水辺ではございません。私の守備範囲でございます。ですので…お帰りを願います』
ぺこり、と彼女が頭を下げた途端、人魚は床に埋まっていき、机が元のように戻りだした。
『例え千歳を生きる貴女でも、ここで私と…では辛いものですよ』
完全に上がった顔に薄く開かれた目は全く笑っていなかった。
《おのれ学校童子イイイイ》と言い残し人魚は消えた。
残ったのは水槽の中の私と安心した顔の花子さん、そして『学校で私に勝てる訳ないやん』と溜息をついた女の子だけだった。
「学校童子って噂じゃなかったんだ」→←「ごん、お前だったのか」
3人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:高槻 | 作成日時:2020年2月25日 8時