【男主】記憶喪失の剣豪は月世界旅行に行きたいようです。【文スト】

あん ページ2

自分は橋の上から移動する事にした。


未知なる場所へ向かうとは、何と心踊る事であろう。

目的を持たずに彷徨(うろつ)くと云うのであれば尚更。


橋というものは往々にして、二つの別の道をつなぐ為に在るもの。
よって、此処では二つのうちどちらに進むかを確定する必要が生ずる。


腰に差していた細身の剣――レイピアという名だった筈だ――を地面に突き立て、手を離す。

レイピアは自身を左に傾けたのち、重力に身を委ねて倒れた。


「よし、こっちだな！」


剣を拾い上げ、真っ直ぐに左側の道へ歩みだす。
否、歩みださない。

自分が一歩歩き出す前に、腹が鳴った。


「ふむ、空腹状態にあるという訳か。行く先に食事処があることを祈ろうか」


その前に、自分の持ち物を確認しておく。

着ていたジャケットのポケットを探り、食事処で対価として渡せそうなものがあるかを探しておく。
黄色い財布に双眼鏡、ハンカチちり紙携帯電話。

財布には、クレジットカードと現金4万円分があった。
携帯を見たが、残念ながら連絡先は一つも登録されていなかった。


当面は、此れだけあれば十分だろう。


「さぁ、旅に出ようではないか！自分が何者かを探す旅。嗚呼、何と浪漫にあふれた響き！」


マントを翻し、意気揚々と目の前の道に向かって歩き始めた。

どぅ→←ぜろ

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