09：すれ違う2人2（にっかり青江） ページ9
「それでここで何してたの？」
「……あれが取りたいの」
あれ、と指差されたが箱がたくさんあり、どれだかさっぱりわからない。
「どれ？」「あれ」「んー？」「えーと、あれ。あの細長いやつの隣！」
と何度か繰り返す内に、主は出来るだけ同じ位置から見て伝えようとしているのか
僕に近づいてきた。
手を伸ばせば容易に触れられる距離にいるのに、僕の気持ちは届かないのかな。
気がついたら主をぎゅっと抱きしめていた。
想像以上に華奢な身体に内心驚く。
そして、こんなに触れたのは初めてで心臓がどきどきとうるさい。
嫌がられると思ったらそんなことはなく、主は大人しく僕の腕の中にいる。
疑問に思って主の様子を窺うと耳まで真っ赤に染まっていたので
「……主？」と思わず呟けば、主が切れ気味に叫んだ。
「にっかりさんが悪いんだから！かっこよくてどきどきしちゃって落ち着かないんだもん！！」
一瞬思考が止まる。
それって……
「それって僕のことが好きってこと？」
「し、しらない！」
そう言って腕の中でそっぽを向く主が可愛すぎて緩む口元を抑えられない。
僕はくすくす笑いながら主の耳元に囁く。
「僕は君のこと、好きだよ？」
主は僕に頭をもたれかけると「私も」と、やっと聞こえるくらいの小声で囁き返した。
主の目を見つめる。
恥ずかしそうに泳いでいた視線が絡まると、もう逸らされることはない。
はにかむようにふわりと微笑む主の頬に口付けを一つ。
驚きに固まる主の手を取り、倉庫の外へ駆け出す。
爽やかな風が心地よい。
「にっかりさん、あの箱取りたかったんだけど……」
「ふふ、僕には届きそうにないから石切丸に頼もうか」
そう言って、わざと石切丸がいなそうな場所を主と手を繋いで練り歩く。
数時間もしない内に本丸中に知れ渡った僕達の仲に、主が怒るのはまた別の話。
10：欲張り（後藤藤四郎）→←08：すれ違う2人1（にっかり青江）
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 90人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
でゅー(プロフ) - マイさん» わかりました！リクありがとうございます！ (2019年5月14日 20時) (
レス) id: b6ddde2ec1 (このIDを非表示/違反報告)
マイ - 日向くんが好きなので、お願いできますか？ (2019年5月13日 1時) (レス) id: dc20a671de (このIDを非表示/違反報告)
でゅー(プロフ) - ゼルクレアさん» 承知致しました！一期の切な甘い系、いいですね〜。リクありがとうございます (2016年8月27日 15時) (レス) id: 7acb23c39d (このIDを非表示/違反報告)
ゼルクレア(プロフ) - リクエストお願いできますか？一期一振の切ない系の甘い話でお願いします！ (2016年8月24日 19時) (レス) id: 75be5ce900 (このIDを非表示/違反報告)
でゅー(プロフ) - のぞみさん» 了解です！安定は書いたことないので書きますね〜！リクありがとうございます (2016年8月7日 15時) (レス) id: 7acb23c39d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：でゅー | 作成日時：2016年2月11日 15時
