注文の多い吸血鬼 (ページ1)

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on a Fri.-1- ページ1

午後12時半。ここは夢ノ咲学院アイドル科学生食堂。昼時の食堂は、食べ盛りのアイドルの卵の男子たちで混雑する。アイドルを目指す男子たちを食の面からサポートするという役目も担っているため、栄養バランスがしっかり考えられたメニューが揃っている。そして、値段も手頃で学生の財布にも優しい。

そんな、よくあるごくごくありふれた学生大食堂。アイドル科学生食堂というだけあって、色々なタイプの世間的に“イケメン”とか“顔が良い”と言われる男子たちが一堂に会しているという点以外は。

今日は、金曜日。毎週金曜日は、とある食材を巡ってどうでもいい諍いが勃発するのである。食堂利用者にとっては、知らぬ者は居ない恒例行事となっている、といっても過言ではない。

「生ハム大盛りっていつも言っておるじゃろ、嬢ちゃん」

口調こそは老人のそれのようであれ、三奇人の一角、軽音部部長でありながら終始飄々としている朔間零が、そこそこ並んだ列の先頭で彼の好物である生ハムの量に関して、抗議する姿は些か異様である。

「朔間、うるさい！後がつっかえてるんだから、ごちゃごちゃ言ってないでさっさと進む！」

そんな彼に怯むことなく応戦しているのは夢ノ咲学院食育課所属の栄養士のAである。彼女は、このアイドル科学生食堂以外の学園に設置されている他科の食堂においても、メニューの献立作りから、調理、配膳業務を担っている。

金曜日はAのアイドル科学生食堂に勤務の日であると同時に、零が好物とする生ハム料理、日替わりメニューとして『生ハムサラダ』が提供される日なのである。

できるだけ多く好物である生ハムを食したい零の欲望と、他の野菜とのバランスも考えた適正な量を提供したいというAの信念がぶつかり合って、いつもこのような事態に陥るのである。両者一歩も引かないため、ただでさえ混雑している食堂は更に混雑してしまう。

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