告白１４「迷惑」 ページ15
.
私たちの授業はもう終わっていたから、素早く食堂から逃げてカバンを掴む。
とにかく無我夢中で走って、やっと大学の門をくぐる。
そのとたん、堪えていたものが一気に溢れた。
ああ、泣いちゃダメって思ってたのに。
阿部くん、すっごい冷たい目してた。そりゃ明日は英検だし、ストレスはたまる。
ストレス溜まってるとこに私みたいにベタベタうざ絡み女が来たら、そりゃ嫌だよね。
その上阿部くんの前で泣いて、ほんっと困らせて迷惑なやつ。
阿部くん好きでいる、とか阿部くんにとってこの上ない迷惑なんじゃ……？
好きな人にこんなんばっかして困らせて。
馬鹿じゃん私。
雨が降ってきた。
あーあー、お天道様まで私の失恋からかってんの？ほんっとに哀れだな、自分。
駅に向かって泣きながら歩く女を、周りのみんながすこし視線を浴びせてくる。
別にいいよ、もう。
プライドなんて党に捨てたんだからさ。
樹「A…っ！」
そのとき、傘を持った樹が後ろの水たまりを踏む音が聞こえる。
私ったら最低だから、阿部くんがよかったなってほんのちょっと思った。
樹「何で傘持ってないの」
『かやちゃん(目覚ましのお天気アナ)そんなこと言ってなかったもん』
馬鹿げたことを言うと、樹はそっと傘を差し出した。
その傘を受け取ろうと手を伸ばすと、不意に手を握られて体が引き寄せられる。
TikTokでこんなん流行ってなかったっけ、と呑気に脳がそう言った。
乱暴に落とされた傘が転がっている。
『…じゅ、』
樹「あんな奴やめて俺にしろよ」
『じゅり…？』
私が名前を呼ぶと、樹はもっと強く抱きしめた。
そのとき。
「Aちゃ、……ぁ…」
樹の背中越しに見えた、走ってきたであろう阿部くんの姿。
行かなきゃ、って本能的に思ったけど樹が離してくれない。
『じゅり、離して…』
樹「離さない…阿部ちゃんにまた傷つけられたらどうするの？」
『阿部くんが怒ったのは私のせいなんだよ。』
そう説明しても樹は離さない。むしろ強く抱きしめている。
そんな私達を見た反対方向へ歩いていく阿部くんを、わたしは見つめた。
とんでもない勘違いだ。
私が好きなのは阿部くん。なのに、なのに。
叫べない悔しさで涙がもう一度溢れる。
わたし、大馬鹿者じゃん。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 656人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「阿部亮平」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
さゆ(プロフ) - 凄く好きな小説が、目に入り、見てみました！！阿部ちゃん、最高です！！これからも更新頑張ってください！！！！ (2020年1月15日 17時) (
レス) id: adcb5930fd (このIDを非表示/違反報告)
ぽむりんこむ - つくもさん» あべちゃん不良キャラは我得でしかないけど書きたかったんだ (2019年11月30日 16時) (レス) id: 6385c24a4a (このIDを非表示/違反報告)
つくも(プロフ) - はーい( ＾∀＾)/おひさー！デビュー曲やばいぃぃぃ！で、阿部ちゃんを不良にするとは (2019年11月28日 22時) (レス) id: 04d305e3fc (このIDを非表示/違反報告)
ぽむりんこむ - momoさん» うそーごめんね、語彙力ないんだわ…別垢から失礼 (2019年11月10日 17時) (レス) id: 6385c24a4a (このIDを非表示/違反報告)
momo - 混乱 (2019年11月3日 21時) (レス) id: bd74373af8 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ぽむりんこむ | 作成日時：2019年9月23日 21時
