2 side A ページ36
近いうちにこうなることは分かってた。
その時俺は平気な顔で。
頑張ってきたニノを、お帰りって迎えられたらいいなって。
思ってたんだけど。
「…疲れた。」
ベッドに倒れ込んで、枕に顔を埋める。
何とか今日を乗り切った。
人の姿を保つのって、こんなに手足が重かったかな。
本当にこれでいいんだろうか。
待ってるだけでいいんだろうか。
何かしなきゃいけないことはないだろうか。
ふつふつと込み上げる焦りは、炭酸水みたいに弾けてく。
ある遠い夜。
一人外へ歩いていく背中。
帰りたくても帰れなかったのは…、あれ？ニノの話だっけ？俺の話だっけ？
「んん〜、…っ、痛！え？」
胸のもやもやがどうしようもなくて、頭を掻いたら痛みが走った。
見ると、いつの間にかシーツは引っ掻き傷だらけで。
自分のこめかみから滴り落ちた赤が、枕に小さな点を付けた。
「……うん、そうだね。」
見つめた手のひら。
人間の指先に狼の爪が鋭く光る。
瞳の色は今何色に染まっているんだろう。
ニノが居なくなったと気付いて。
庭のイチイの生け垣を越えた辺りでぷつりと消えた気配を視て。
色付いていたはずの景色は、いとも簡単に剥がれ落ちた。
回らない頭は火照るのに、身体の芯がとても冷たい。
そんな心に震えるのは。
一人残される恐怖を叫ぶのは。
俺、というよりは…。
「帰ってこなかったもんね…。」
あの夜、どうして一人にさせたのか。
手を離れた宝石は、あっという間に坂道を転がっていく。
ついて行けば良かった。
無理矢理にでも手を掴んで、逃げてしまえばよかった。
それが、手放した過去の俺の。
どこかに残ってるかもしれない“まーくん”の、最大の後悔。
駄目だ。
待っていられるはずがない。
もうね、あれだ。トラウマなんだよ。
このまま悩んでたら健康に悪い。
あの頃の俺ができなかったこと。
今の俺らならできること。
迎えに行くよ。
それで、今度こそ一緒に帰ろう。
皆が待ってくれている。
何でいるのって、驚くかな。
何しに来たんだよって、文句言うかな。
嬉しいくせにって言ってやろう。
「………よし！」
そうと決まれば、さてどうしたものか。
普通に出掛ければ直ぐにバレちゃうし。
俺が出掛けることであんまり心配もかけたくないし。
となると…。
「…アレを使うしかないよね。」
畳んだ服の間に隠してあった、とっておきの品を取り出して。
皆にはまだ内緒ねって、家にお願いしたら、そっと窓を開けてくれた。
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totto(プロフ) - かえさん» ありがとうございます。本当に当たりなのか？！(笑)その辺りも含めて見ていてあげてください。 (2016年10月12日 23時) (
レス) id: c963255682 (このIDを非表示/違反報告)
かえ(プロフ) - 今回も大当たり間違いなしですね(^^)留守番組も楽しみですが、三人のプチ船旅も楽しみにしてますね♪ (2016年10月11日 21時) (レス) id: cf909ea54e (このIDを非表示/違反報告)
totto(プロフ) - かなさむさん» 鬼さんは正体を隠す気があるんだか無いんだか。次回更新は留守番組の予定ですが、三人のぷち船旅も楽しみにしててください！ (2016年10月11日 0時) (レス) id: c963255682 (このIDを非表示/違反報告)
かなさむ(プロフ) - むふむふー。鬼と俺。楽しみすぎる。 (2016年10月9日 23時) (レス) id: 87b8d3969e (このIDを非表示/違反報告)
totto(プロフ) - かなさむさん» かなさむさん、こちらこそいつもご感想をありがとうございます。ひめ姐さまはその通りです！狗神白味噌さんと一緒にいる姐さんです。彼らもそのうち再登場することでしょう。 (2016年8月12日 23時) (レス) id: c963255682 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：totto | 作成日時：2015年11月29日 11時
