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9 side O ページ9

次の日は、日の出と同時に畑に向かった。
ニノが来るのは、いつももっと陽が高くなってからだけど、どうにも待ち切れなかったみたい。
まだ朝霞の残るしんとした空気の中で、鍬を振り上げる。
早く終わらせて、残った時間はずっとニノと喋ってようって。
たぶんそんなつもりで来たんだと思う。

だからここで、日の出とともに神社を飛び出した阿形に会えた。


『まー!』

「あれ?阿形様?」


神社の方から真っ直ぐこちらへ。
子犬体型の脚を懸命に動かして、転がるように走って来る。
嬉しいことがあったわけじゃない、喜んでいるようには見えない。
その表情は険しくて。

あぁ…、嫌だ。


「どうしたのー?」

『あいつ消えた!』

「え?」

『朝まだき出ていった!急いでた!』


走ってった、追いつけなかった。必死に相葉ちゃんへ伝える。
そうして告げる。
帰ってこない。


「どういうこと…?」

『儀式!祠!』


さーっと、体内で血が流れ落ちる音を聞いた。
血の気が引くとは、きっとこういうこと。

神社が行う人身供犠の儀。
祠の場所は狛犬には分からないという。人が勝手に造り上げたモノだから。


(相葉ちゃん!)


鍬を放り投げて、阿形をそこに残して。
相葉ちゃんは駆け出した。
震える身体を制して、崩れ落ちそうな脚に鞭を打って。
当ては何もないけれど。
まだ間に合う、そんな一縷の望みにかけて。















相葉ちゃんは捜したよ。
ずっとずっと捜し回った。

何度も転んで、傷を作って。
崖から落ちても立ち上がって。
普段なら絶対に足を踏み入れないような場所にも行った。

何度も名前を呼んだ。
声が枯れても叫び続けた。

だけどニノは答えてくれない。


どうして?
昨日は笑っていたのに。また明日って、約束したのに。
一体何が起こったの?

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作品ジャンル:ファンタジー
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totto(プロフ) - 初うさぎさん» 初うさぎさん、はじめまして。コメントありがとうございます。すみません今頃気付きました(>.<) 温かくなってくださいましたか?とっても嬉しいです(^-^*)今後もよろしくお願いします。 (2015年12月31日 11時) (レス) id: c840215f83 (このIDを非表示/違反報告)
初うさぎ(プロフ) - はじめまして・このお話の世界観に惹かれ、一気に読ませていただきました。素敵なお話が多く、心が温かくなります。これからも楽しませていただきます。では続きにいてきま〜す(#^.^#) (2015年12月20日 9時) (レス) id: 6cde87a74e (このIDを非表示/違反報告)
totto - かえさん» かえさん、こんにちは。過去編で重めの話が多かったのであったかいのも書きたいな、と。いつもコメントありがとうございます(^ー^)更新頑張りますね! (2015年5月13日 0時) (レス) id: 03ed178ab0 (このIDを非表示/違反報告)
かえ(プロフ) - tottoさん。お久しぶりです(^^) お題:あい。素敵ですね。そのすべてがその場所に…いつも更新を楽しみに待ってます(^^) (2015年5月10日 21時) (レス) id: 80843bd474 (このIDを非表示/違反報告)
totto - レイカさん» レイカさん、はじめまして。コメントありがとうございます。お褒めいただき光栄ですo(^-^)o 文才...ありますかね?これからも精進いたします。 更新はとても遅いですが、今後もよろしくお願いしますね。 (2015年4月12日 18時) (レス) id: 03ed178ab0 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:totto | 作成日時:2014年12月2日 22時

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