あの人のヒーローになれたなら ページ43
story:042
『……い、たい……、あ、たすかったんだ……』
目を覚ませば病院だということがすぐに解った。
真っ白な世界と、あの病院特有の匂い。
違和感のある酸素マスクに、動く時に意識してしまう点滴。
そして、
『、消太……』
眠っている、消太がいた。どれだけ心配をかけたか解っている。
カレンダーをみると、2日間、眠ったきりだったことを示していた。
「……ん、…………A……! はあ、……良かった……」
『ごめん、心配、かけて』
「もう、無茶するな……、死ぬか、と、思ったんだぞ……」
消太が泣いた。
目頭を抑えながら、声を震わせながら、泣いていた。
その姿を見て、自分がどれだけ危ないところに立っていたのか思い知らされた。
辺りに置いている私の大好きなチョコレート。
きっと私が目を覚ました時にと思ってこんなにたくさん買ってくれたんだ。
『、…………ごめん、ただいま』
私もつられて涙が溢れ出した。
消太の温かい手が、私の手を包んで離さなかった。
それは何かを誓っているようにも見えた。
私もその手を握り返しながら、もうこの人に、心配かけない。と、決意した。
それから、医者を呼んで検査をした。
「よく頑張りましたね」と声をかけられた。やっぱりかなり大変な状態だったんだ。
その証拠に、ずっと、背中はじんじんと痛む。
勿論、処置はされているものの、痛みが消えないのだ。
大怪我、そう聞いていた。でもそんな時、ふと頭に浮かんだのは、
いつ、治るか。
そうだ、私。
サーッと血の気が引いていった。
『、いつ、治るんですか』
「…………ええ、2ヶ月ですね、全治まで」
『…………そうですか』
悲しそうに告げる医者も、まっすぐみることができなかった。
ショックは受けていた。
2ヶ月、今から数えて2ヶ月とは4月を指す。
そうすれば勿論、動くことはできない。
いい、と言われても、痛みで思うように動けないだろう。
『……、そっか』
「A、」
『気にしてない。別に』
消太と二人きりになった空間で、ただ虚しく声が響く。
そのせいで声に出すこの言葉が、嘘なのか本当なのかさえわからない。
でも、私は、
本当であって欲しいと願う。
『あの女性を救けることができたなら、こんな怪我、軽い代償だよ。
実技試験なんて、いい。
ただ、あの人のヒーローになれたなら』
はじめて私は、人を救うことができた。ヴィランであった自分が。
その感動は、悲しみをも上回っているんだ。
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青春ログアウト(プロフ) - ムーンさん» コメントありがとうございます。お、お茶子くんじゃないか笑 設定に関しては自分得で書きましたので共感してくださるのは光栄ですね！これからも頑張ります！ (2018年3月7日 7時) (
レス) id: 879efebfe2 (このIDを非表示/違反報告)
ムーン(プロフ) - この設定好きだ。私。 (笑) 設定だけじゃなくてお話もどストライクです。これからも頑張ってください！更新待ってます(-ω-) (2018年3月6日 23時) (レス) id: 633020e803 (このIDを非表示/違反報告)
青春ログアウト(プロフ) - 夏みかんさん» コメントありがとうございます。自分でも書いていてとても楽しいです！弔らヴィランの関係も目が離せません！笑笑 更新頑張ります！ (2018年2月19日 21時) (レス) id: 879efebfe2 (このIDを非表示/違反報告)
夏みかん(プロフ) - 相澤先生と弔くん尊い…設定が最高です！！usjの話とか、どうなるのか気になります！！これからも頑張って下さい(*´ω｀*) (2018年2月19日 18時) (レス) id: a02c522a65 (このIDを非表示/違反報告)
青春ログアウト(プロフ) - blackReaperさん» コメントありがとうございます。10月22日ですか？これは自分の誕生日そのまま設定したので自分とも一緒ですね笑 (2018年2月17日 9時) (レス) id: 879efebfe2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：青春ログアウト | 作成日時：2018年1月10日 19時
