初めての野球観戦 ページ9
試合は彼のホームランが決定打になりそのまま逆転勝利を収めた。隣に座っていた男の子たちとハイタッチを交わし、そそくさと球場を出ようとした時に丁度一平さんから電話がかかってきた。
『翔平がAちゃんと一緒に帰りたいって聞かないんだけど…いい?』
電話の奥は騒がしくて、彼に至っては「一平さん早く!!」と急いでいるような声が聞こえてきた。
『地下の駐車場で待っててくれたら大丈夫だから。』
そう言われてもうーんと悩んでいると、
『今日はホームラン打ったから許してあげて。相当嬉しかったみたいだよ、Aちゃんが見に来てくれて』
苦笑しながらそう言われてしまえば頷くしかなかった。
そんな経緯があって、私は球場のスタッフさんに連れられ彼の車があるエンゼルススタジアムの地下駐車場に来ている。
ポルシェの車を見つけて、その隣の壁に背を預けながら今日の試合を振り返った。
なんと言っても最後の逆転3ランホームラン。
あんなに何かに興奮したのは初めてだった。
大きな球場の雰囲気を一度に彼が支配したのだ。
薄暗い視界の中で興奮が冷めやらないまま彼を待ち続けた。
暫くすると、出入口の方からシャワーを浴びたばかりであろう彼とその後ろに続く一平さんが歩いてきた。
「お疲れさま…!」
駆け寄ると両手を広げられそのまま腕の中に飛び込んだ。
「凄い、凄かったよ!逆転ホームランって、あの場面で、とにかくもうかっこよかった!凄いね翔平くん!」
テンションが高くなって饒舌に喋る私が珍しいのか、驚いたように笑っていた。
「ホームラン打つって約束、果たせてよかった。」
穏やかな表情でポンポンと私の頭を撫でた。
憶えてたんだ、と呟くと当たり前じゃん、と軽快に返された。
「打席に立った瞬間Aの顔が見えて、一瞬何してんのとか考えたんだけどさ、」
「あの時の約束思い出して、奥さんにかっこいいとこ見せるためにも絶対打ってやろうって思って。俺かっこよかったでしょ?」
うんうんと勢いよく首を縦に振った。
「あ、でも一人でスタジアムに来たのは許してないから。
一平さんも何も言わないし、めちゃくちゃビビったからね?」
頬っぺたを弄られながら、次来るなら連絡はしてよ、と言われた。
「そうしたらまたAのためにホームラン打つから」
おどけたような口ぶりだったが、その顔は真剣だった。
「…うん、楽しみにしてる」
肩に腕を置かれながら一平さんが待つ車へと一緒に乗り込んだ。
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はる(プロフ) - 初めまして!1と2、公開して頂きありがとうございます!ずっと読みたかったので一気に読みました。途中で涙止まらず…1と2を読んで3を読むとまた違った視点で読めて凄く楽しいです。話がやっと繋がりました。3の更新もホント嬉しいです!これからも待っています! (1月30日 2時) (レス) @page26 id: 7953a5096d (このIDを非表示/違反報告)
かおり(プロフ) - 更新、楽しみにしていました。ありがとうございます! (1月29日 23時) (レス) id: 011b5f1b71 (このIDを非表示/違反報告)
はるきち(プロフ) - もう一度初めから読みたいです…パスワード教えて頂きたいです! (1月21日 0時) (レス) id: d1652f67c1 (このIDを非表示/違反報告)
ジ - 初めから読ませていただきたい為、よろしければパスワードを教えていただきたいです。お願いします! (12月12日 0時) (レス) id: 9c721e875e (このIDを非表示/違反報告)
ねぇい(プロフ) - コメント失礼します。初めから読ませていただきたい為、よろしければパスワードを教えていただきたいです。よろしくお願いします。 (12月1日 11時) (レス) id: 4c70fa6baa (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あきら | 作成日時:2023年7月8日 12時