初めての野球観戦 ページ7
凄い、ただそれだけの感想しか出てこない。
いつもテレビで見ていたはずなのに、大きなスクリーンや果てしなく並ぶ座席に独特なスタジアムの雰囲気に飲み込まれてしまいそうだった。
こんなところで彼は毎日、ずっと戦っている。
改めてその凄さが分かるようだった。
足を一歩踏み出し、階段を駆け下りて行く。
「えーと、セクション110のC列だから……」
まぁ、一平さんがチケットを用意すると言った時点で優しいあの人ならするかもしれないと思ってはいたが、思ってはいたけども。
「近すぎる…」
もう目の前はグラウンドだ。
何ならベンチの屋根が見える。
私が何故こんなにも焦っているのかと言うと、実は今日、彼に内緒で来ているからだ。
少し前見に行ってみたいと話していると、それを聞いた球団関係者の方が気を利かせて試合前に彼と会う時間を作ろうとしたり、身内じゃないと入れないような特別な席に案内するからと言ってそれ以来行きたいとは言わなくなった。
そんな特別な扱いをして欲しい訳ではなく私はただ野球を楽しみたいだけなのだ。
彼と近しい球団の人に見つかってしまえば最後。
それに一人で来ていると知られてしまえば、「何してんの」「危機管理能力が無さすぎる」と彼から叱られるに決まっている。
だから内緒にして来たのに。
一平さんの配慮が裏目に出ないか心配だったが、試合が始まれば結局そんな気持ちはどこかに吹き飛んだ。
選手紹介の中にSYOUHEI OHTANIと名前が叫ばれるとより一層の大きな歓声と拍手に包まれる。
マウンドに相手の先発選手が上がり試合が始まる。
異次元の球の速さでこの席からでもよく見えない。
一気にツーアウトを取られた場面で彼が打席に立った。
派手な音がなったと同時に瞬時にボールを仕留めて、右前に切り込んだ。
歓声と共に一塁向かって走り、周りからはOHTANI!!と嬉しそうな叫び声が聞こえる。
私も例に漏れず手を叩いて大喜びして、塁上で楽しそうに相手チームの選手と喋る彼をスクリーン越しに眺めた。
立ち上がりのよかったエンゼルスはそのまま3回表で2点を決め4回表で更に点を追加して球場のボルテージは最高潮にも等しかった。
その後点を取り返されても、彼が打席に立つたびに子供たちが目を輝かせてホームランを打つのではないかと期待する姿が可愛らしくて仕方がなかった。
そうだね。
見たいよね、翔平くんのホームラン。
見れたらないいな。
ホームランを打つ、世界一カッコイイあなたの姿を。
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はる(プロフ) - 初めまして!1と2、公開して頂きありがとうございます!ずっと読みたかったので一気に読みました。途中で涙止まらず…1と2を読んで3を読むとまた違った視点で読めて凄く楽しいです。話がやっと繋がりました。3の更新もホント嬉しいです!これからも待っています! (1月30日 2時) (レス) @page26 id: 7953a5096d (このIDを非表示/違反報告)
かおり(プロフ) - 更新、楽しみにしていました。ありがとうございます! (1月29日 23時) (レス) id: 011b5f1b71 (このIDを非表示/違反報告)
はるきち(プロフ) - もう一度初めから読みたいです…パスワード教えて頂きたいです! (1月21日 0時) (レス) id: d1652f67c1 (このIDを非表示/違反報告)
ジ - 初めから読ませていただきたい為、よろしければパスワードを教えていただきたいです。お願いします! (12月12日 0時) (レス) id: 9c721e875e (このIDを非表示/違反報告)
ねぇい(プロフ) - コメント失礼します。初めから読ませていただきたい為、よろしければパスワードを教えていただきたいです。よろしくお願いします。 (12月1日 11時) (レス) id: 4c70fa6baa (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あきら | 作成日時:2023年7月8日 12時