朝食 ページ5
二階から降りてきて眠たそうに目を擦る彼に
「おはよう」
と挨拶をしながら、味噌汁を温めていた火を止めた。
今の時間は10時。
昨夜は23時にもう寝ると言って上にあがってしまったから、脅威の11時間睡眠となる。
それでいてまだ眠たそうな表情に笑みを隠しきれず、お皿に野菜を盛り付けながら危うく彼の大嫌いなトマトを乗せてしまうところだった。
スライスされたトマトは自分のお皿に乗せて、大きなお皿にはトマトの変わりに茹でたブロッコリーを盛り付けた。
食事をするテーブルにご飯を運んで配膳を終えたちょうどその時に顔を洗い終わった彼が席に着いた。
「美味しそ〜。いただきます」
一緒に手を合わせて箸を手に取る。
食事は基本、球団の管理栄養士さんから低脂質高タンパクであるようにと釘を刺されているからそれに沿って作ってある。
食べてはいけないものやカロリーに食事量、ルールがたくさんあって時々何を作ろうか困る時もあるのだが、美味しい美味しいと言って頬を緩ませる彼を見たら料理をするのも楽しくなる。
清子さんから料理のいろはを教えてもらったが、誰かのためにご飯を作るのは彼が初めてだった。
「これ、めちゃくちゃ美味しい」
そう言って指さしたのは、昨日の晩のうちに作っておいた、きんぴらごぼうと鶏ムネ肉を混ぜ合わせたものだった。
味付けを薄すぎないように濃すぎないように、鶏ムネ肉にもしっかり味が沁みるようにと工夫して作ったものだから、美味しいと言われて嬉しいのは当たり前だ。
「ゆっくり食べて」
今日はナイターゲームと聞いているから時間にはまだまだ余裕があるはずなのに、頬にご飯をめいいっぱい詰めて一心不乱にかきこんでいる。
まるでリスみたいだ。
普段クマのような彼が今は可愛らしいリスに見えるのがおかしくてついほくそ笑んでしまう。
不意に顔を上げた彼の口元に綺麗にご飯粒がついているのを見て、まるで親が子どもの世話を焼くかのように無意識に手を伸ばしてそれを口に含んだ。
子どもじゃないんだから、と呆れたように零すと、魚の骨を綺麗に取り分けていた彼がいきなりピシッと固まった。
「それ、俺がやる方でしょ…」
どうやら恥ずかしかったみたいだ。
ご飯で片頬を膨らませながら、箸を持つ手で口元を抑える姿が可愛らしくて、つい手を伸ばして柔らかな髪を撫でた。
私も箸を進めて、いつもより少し遅い朝食のゆったりとした時間を楽しんだ。
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はる(プロフ) - 初めまして!1と2、公開して頂きありがとうございます!ずっと読みたかったので一気に読みました。途中で涙止まらず…1と2を読んで3を読むとまた違った視点で読めて凄く楽しいです。話がやっと繋がりました。3の更新もホント嬉しいです!これからも待っています! (1月30日 2時) (レス) @page26 id: 7953a5096d (このIDを非表示/違反報告)
かおり(プロフ) - 更新、楽しみにしていました。ありがとうございます! (1月29日 23時) (レス) id: 011b5f1b71 (このIDを非表示/違反報告)
はるきち(プロフ) - もう一度初めから読みたいです…パスワード教えて頂きたいです! (1月21日 0時) (レス) id: d1652f67c1 (このIDを非表示/違反報告)
ジ - 初めから読ませていただきたい為、よろしければパスワードを教えていただきたいです。お願いします! (12月12日 0時) (レス) id: 9c721e875e (このIDを非表示/違反報告)
ねぇい(プロフ) - コメント失礼します。初めから読ませていただきたい為、よろしければパスワードを教えていただきたいです。よろしくお願いします。 (12月1日 11時) (レス) id: 4c70fa6baa (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あきら | 作成日時:2023年7月8日 12時