vs オーストラリア ページ30
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シーズン中の試合ではあまり感じることの無い、世界大会、国際試合、その先発という重圧。
こういう時、大抵記者やアナウンサーに決まって聞かれることはただ1つ。
『先発という役割、試合前試合中、緊張はしませんでしたか?』
だから今自分に聞いてみる。
牧さん声出しの円陣が終わって、相手ピッチャーがマウンドに立ち、打席にはヌートバーがいる。
恐らく10分後には俺はグラウンドに足を踏み入れているであろう、今この時間。
大丈夫、緊張はしていない。
うんよし、試合終わりのインタビューにはそう答えよう。
勿論、すでに準々決勝進出が決まってるからとかそういうわけではなく。
不安要素は練習とミーティングと会話で取り除いてきたし、上手くやる自信もある。
不思議と負ける気も全くしない。
「近藤さん、打ってくださ〜い」
ネクストバッターズサークルに立った大先輩にそう呼びかけると、苦笑いされつつも、おう!とカッコよく返された。
ヌートバーが四球で一塁に進むと、次は近藤さんがグローブをつけ直しながら打席に立った。
元々出塁率の高い人だからワンチャンあるなぁと考えていたけど、1球目2球目見逃しで3球目に本当にライト方向にヒットを打ってくれた。
ドーム内に歓声が響き渡る。
こういうのはあまり期待せずにいた方がいいんやけど、やっぱりこの人を見たら期待せずにはいられない。
何食ったらそんなにデカなるん、ってぐらいの広い背中に着いた16という背番号があまりにも頼もしすぎる。
ボールを触っていた手を止めて、ついでに少し息も止めてしまった気がする。
1級目は内角低めのボールを空振り。でもその振りを見て俺たちは全員気付いた。
2球目。
「絶対、ホームら、」
ホームランを打つ気、そう言いかけた時、さっきの歓声がもう一回り大きく会場全体に響き渡った。
「もうバケモンやって」
ヌートバー、近藤さん、そして翔平くんが悠々と帰ってくるのを見ながら誰かが笑いながら呟いた。
「由伸、手と足止めんと動いとけよ」
コーチに注意されて自然と意識を自分の身体に戻した。
1回から3点入ることなんてそうそうない。
偉大なチームメイトに感謝しながら、キャッチボールをするためにグラウンドへと降り立った。
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はる(プロフ) - 初めまして!1と2、公開して頂きありがとうございます!ずっと読みたかったので一気に読みました。途中で涙止まらず…1と2を読んで3を読むとまた違った視点で読めて凄く楽しいです。話がやっと繋がりました。3の更新もホント嬉しいです!これからも待っています! (1月30日 2時) (レス) @page26 id: 7953a5096d (このIDを非表示/違反報告)
かおり(プロフ) - 更新、楽しみにしていました。ありがとうございます! (1月29日 23時) (レス) id: 011b5f1b71 (このIDを非表示/違反報告)
はるきち(プロフ) - もう一度初めから読みたいです…パスワード教えて頂きたいです! (1月21日 0時) (レス) id: d1652f67c1 (このIDを非表示/違反報告)
ジ - 初めから読ませていただきたい為、よろしければパスワードを教えていただきたいです。お願いします! (12月12日 0時) (レス) id: 9c721e875e (このIDを非表示/違反報告)
ねぇい(プロフ) - コメント失礼します。初めから読ませていただきたい為、よろしければパスワードを教えていただきたいです。よろしくお願いします。 (12月1日 11時) (レス) id: 4c70fa6baa (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あきら | 作成日時:2023年7月8日 12時