恋と愛、嘘と結婚 3

WBC開幕 ページ27

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2023 WORLD BASEBALL CLASSIC
東京プール開幕




『ついに始まりました。WORLD BASEBALL CLASSIC、通称WBC。開幕戦となる今日はディーン・トレーナー監督率いる中国との対戦です。』

『対する日本は栗山英樹監督の元、あの大谷翔平、ダルビッシュ有、山本由伸など歴代のWBCメンバーの中でも最強と名高い選手を揃えて中国戦に挑みます。』


スマホを持つ手がじわりと汗をかいていた。


今、日本では3月9日の19時。WBC東京プール第1次ラウンドがちょうど開幕したところだった。


配信サイトで見ている中継画面には、ついこの間までキャッチボールの相手をして朝ごはんを一緒に食べた彼が大きく映し出されていた。

彼が野球界屈指の選手ということも、多くの人に愛され応援されていることも理解していたつもりだ。それを実感するような出来事も沢山あった。


けど


試合会場に広がる多くの"16"という数字や、"大谷翔平"という名前が刻まれたボートを見て、改めて彼の偉大さを感じた。


今までの私ならそれにまた萎縮してしまっていたかもしれない。だけど今は、そんな彼がとても誇らしく、同時に胸が熱くなった。


「頑張れ」


数時間前に彼に送ったメッセージと同じ言葉を画面に向けて発した。

私の心配なんてなくとも、悠然とマウンドに上がり、ボールを握ってバットを構える打者に向かって豪速球を投げつける。

気づけばあっという間に3打者を抑えて、マウンドを降りてベンチに戻って行った。

キャッチャーの人と会話しながら歩く彼の表情はとても真剣で、それでいて楽しそうでついこちらも笑みを浮かべてしまった。


彼が野球しているところをずっと見ていたい。野球をしている時が1番楽しそうで、キラキラと輝いていて、その姿にずっと恋をしているのだから。


「待ってるから。」


すぐに戻ってくるから、そう言ったあの笑顔がもう懐かしい。


会いたいな、気を抜けばすぐにそんなことを考える私も大概彼を愛しすぎているらしい。


スマホを持ち直して画面にうつるボールを追いかけた。

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