よく言った!! ページ25
阪神・オリックスとの強化試合を終えて、WBC開幕戦を目前に控えた今日。
練習が終わってホテルへ向かうバスの中で、すっかり日が落ちた東京の景色を見ていると通路を挟んだ隣の席から気の落ちたようなため息が聞こえた。
気になってちらっと横を盗み見ると、阪神戦で世間をザワめつかせた話題の人がスマホとにらめっこをして百面相を繰り返していた。
おもろいなこの人と思いながらヘッドフォンを首にかけて声をかけた。
「どうしたんすか、翔平さん」
俺の声に気づいた翔平さんもヘッドフォンをズラして俺の方を見た。
すると持っていたスマホが僅かに震えて、画面を見てみると翔平さんからLINEが来ていた。
寝ている人もいる中で通路を挟んで会話をするのはよくないと思ったのだろうか。
どんな話だろうとワクワクしながらトーク画面を開くと、あまりのしょうもなさについ声が出てしまった。
「奥さんから返信が帰ってこない…?え、しょうもなっ!!」
「ムネ!バカ、うるせっ」
慌てた翔平さんが咎めるように俺を怒ったあと、俺の前で寝ていたはずの拓夢さんが急に振り返って、
「翔平さんの奥さん?!」
と騒ぎ始めた。
みんなが触れたくても触れられなかった話題がついに会話に現れたことで、続々と人が起き始めて、最終的には全員で翔平さんを茶化し始めた。
「奥さんの写真見せて下さいよ〜」
翔平さんの後ろに座っていた由伸さんがぬっと顔を出して、イタズラしたい小学生みたいな笑顔で翔平さんをイジった。
「うちの大将の翔平くんは、奥さんから連絡が来なくて心配だそうでーす!!」
1番後ろの席に座っていた近藤さんが、スマホを掲げながらそう言うと、周りがこの愛妻家〜!などと意味のわからない野次を飛ばし男子高校生のように盛り上がりを見せ始めた。
「おい、ムネ〜」
と面倒くさそうに笑う翔平さんにすんませんとこちらも笑いながら謝るしか無かった。
「喧嘩したの?」
そう落ち着いた声で問うのは源田さんだ。
翔平さんは観念したかのように首を振ると、
「3時間前にLINEしたのにまだ帰ってこないんですよ」
と言った。
ピキリと車内の空気が固まったのを肌で感じた。
え、3時間前?
そんなの心配するほどでもないんじゃ…
いやいや時差があるだろ、時差が
各々がそんなツッコミを心の中でしただろう。だけどそれを口にしてもいいものか、悩んだのは俺も同じだった。
「お前重すぎやろ」
静まり返った車内にそんな声が響いた。
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はる(プロフ) - 初めまして!1と2、公開して頂きありがとうございます!ずっと読みたかったので一気に読みました。途中で涙止まらず…1と2を読んで3を読むとまた違った視点で読めて凄く楽しいです。話がやっと繋がりました。3の更新もホント嬉しいです!これからも待っています! (1月30日 2時) (レス) @page26 id: 7953a5096d (このIDを非表示/違反報告)
かおり(プロフ) - 更新、楽しみにしていました。ありがとうございます! (1月29日 23時) (レス) id: 011b5f1b71 (このIDを非表示/違反報告)
はるきち(プロフ) - もう一度初めから読みたいです…パスワード教えて頂きたいです! (1月21日 0時) (レス) id: d1652f67c1 (このIDを非表示/違反報告)
ジ - 初めから読ませていただきたい為、よろしければパスワードを教えていただきたいです。お願いします! (12月12日 0時) (レス) id: 9c721e875e (このIDを非表示/違反報告)
ねぇい(プロフ) - コメント失礼します。初めから読ませていただきたい為、よろしければパスワードを教えていただきたいです。よろしくお願いします。 (12月1日 11時) (レス) id: 4c70fa6baa (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あきら | 作成日時:2023年7月8日 12時