かなしい人 ページ13
心を決めたのは、熱愛報道元い不倫報道が出てから少し経った後だった。
ずっと悩んで考えて、やっと答えを出しても更に思案して、今日やっと決めた。
これから先のことはよく分からない。
何よりも今は距離を置くことが先決だった。
一度も連絡を寄越さなかった彼に、私はもう諦めてしまった。
引っ越す時に使ったキャリーケースを引っ張り出して急いでその中に服を詰めた。
傷つきたくないから何も考えないように、無我夢中でその作業を繰り返した。
会いたくない。
見たくない。
知りたくない。
早くこの家から出ていきたい。
その一心だった。
どうせ全ては持っては行けないから、殆どは捨て置いて、それほどものを入れたわけではないのに、重たくて仕方がないキャリーケースを玄関まで運んだ。
靴紐を結んで鍵を手に取り、1度も振り返らず家を出ようとした瞬間だった。
「なに、してんの」
解錠音と共にドアが開いて、目の前に現れた彼が零れ落ちそうなほど目を見開いた。
きょろきょろと視線をうろつかせて事態を把握しようと努めていた。
今は、会いたくなかった。
なんでそんな顔をするのと言いたくなった。
悔しくて、悲しくて。
でも絶対涙なんか見せてやるもんかと必死に耐えて、ドアを押さえたままの彼の脇の下潜り抜けて外へ出て行こうとした。
「A、待って。どこ行こうとしてんの。
その荷物は?何してんの。」
「何してんのって、こっちのセリフでしょ」
掴まれた右腕を振り払いながら、自分でも驚くほど冷たい声が出た。
「……、暫くは会いたくないの」
その一言に傷付いたような顔をした。
違う、傷付いたのは私。
「ネットニュースのこと?なら、頼むから話聞いて」
言い訳なんて聞きたくない。
私でも見たことないくらい、他の女の人の隣で幸せに笑うあなたなんて見たくなかった。
「……やっぱり好きだったのは私だけだったね。」
泣きたくなかったから、最後に眉を下げながらニコリと笑って見せた。
階段を駆け降りた先で、ガレージの横に立っていた一平さんが焦ったように誰かに電話をかけていた。
「一平さ、」
そう言いかけて突然、視界が移り変わった。
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はる(プロフ) - 初めまして!1と2、公開して頂きありがとうございます!ずっと読みたかったので一気に読みました。途中で涙止まらず…1と2を読んで3を読むとまた違った視点で読めて凄く楽しいです。話がやっと繋がりました。3の更新もホント嬉しいです!これからも待っています! (1月30日 2時) (レス) @page26 id: 7953a5096d (このIDを非表示/違反報告)
かおり(プロフ) - 更新、楽しみにしていました。ありがとうございます! (1月29日 23時) (レス) id: 011b5f1b71 (このIDを非表示/違反報告)
はるきち(プロフ) - もう一度初めから読みたいです…パスワード教えて頂きたいです! (1月21日 0時) (レス) id: d1652f67c1 (このIDを非表示/違反報告)
ジ - 初めから読ませていただきたい為、よろしければパスワードを教えていただきたいです。お願いします! (12月12日 0時) (レス) id: 9c721e875e (このIDを非表示/違反報告)
ねぇい(プロフ) - コメント失礼します。初めから読ませていただきたい為、よろしければパスワードを教えていただきたいです。よろしくお願いします。 (12月1日 11時) (レス) id: 4c70fa6baa (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あきら | 作成日時:2023年7月8日 12時