された人 ページ12
一人ベッドに沈んだまま、無機質なスマホの画面を眺めていた。
アメリカではそれほど報道されなかったものの、日本ではネットニュースになって瞬く間にそれが広まった。
『めちゃ美人じゃんwww』
『大谷翔平が好きになるのも納得』
『こんな大谷の笑顔、野球以外で見れねぇだろ』
記事のコメント欄にはそんな内容のものがいくつも投稿され、それを見る度に私の心を締め付けた。
まだ、まだ取り返しがつく可能性もあった。
ネットニュースを見た彼がすぐにでも連絡をくれて、誤解だよと言ってくれたら。その一言があったなら、聡明な彼がそんなことをするはずがないと安心できた。
帰国してから2週間、熱愛報道が出て3日。
彼からはなんの音沙汰もなかった。
言い訳でも何でもいいから何か一言言ってくれたら。
これじゃあ認めているのと相違ないのではないか。
何よりもこの猜疑心を決定的なものにしたのは、雪音さんと一平さんの態度だった。
彼に問いただす勇気は出なくて、嫌いな電話で一平さんと雪音さんにかけてみたのだ。
「翔平がそんなことするわけない」
何処かでその言葉を待っていた。
けど、
結局帰ってきたのは肯定とも否定ともつかない、有耶無耶にしようとする曖昧な言葉だけだった。
衝撃だった。
あぁ、本当なんだと思った。
熱愛報道が出てもまだ信じきれない自分がいた。
彼を信じていた。
頭を鈍器で殴られたような気分で、夢から覚めたようだった。
受け止めきれない事実を客観視して、彼の傍にいて相応しいのはあの女性だったのだろうと考えてみたりもした。
私は彼が昔口にした理想の女性とはかけ離れていて、写真に映る女性はそれらを全て叶えたような人だった。
後向きな思考をどうか許して欲しい。
世界的に有名なスポーツ選手と何も持たないただの一般人の差がどれほどあるかなんて明確だった。
その差を埋めることは出来ないと知っていても彼と生きていくことを決めた。
その結果がこれだと言われても文句はきっと、言えない。
一日中部屋に鍵をかけて、ベッドに横たわりながらこれから先のことを考えた。
彼と顔を合わせたくないというのが本音だった。
合わせてしまったら最後、どうしてと責めてしまうだろうから。
まだ信じていたいと思ってしまう自分がどうしても馬鹿らしくて、呆れてしまって。
好きだったのは私だった。
毎日抱き締めてくれて、好きだと言ってくれる貴方よりも私の方がもっとずっと好きだった。
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はる(プロフ) - 初めまして!1と2、公開して頂きありがとうございます!ずっと読みたかったので一気に読みました。途中で涙止まらず…1と2を読んで3を読むとまた違った視点で読めて凄く楽しいです。話がやっと繋がりました。3の更新もホント嬉しいです!これからも待っています! (1月30日 2時) (レス) @page26 id: 7953a5096d (このIDを非表示/違反報告)
かおり(プロフ) - 更新、楽しみにしていました。ありがとうございます! (1月29日 23時) (レス) id: 011b5f1b71 (このIDを非表示/違反報告)
はるきち(プロフ) - もう一度初めから読みたいです…パスワード教えて頂きたいです! (1月21日 0時) (レス) id: d1652f67c1 (このIDを非表示/違反報告)
ジ - 初めから読ませていただきたい為、よろしければパスワードを教えていただきたいです。お願いします! (12月12日 0時) (レス) id: 9c721e875e (このIDを非表示/違反報告)
ねぇい(プロフ) - コメント失礼します。初めから読ませていただきたい為、よろしければパスワードを教えていただきたいです。よろしくお願いします。 (12月1日 11時) (レス) id: 4c70fa6baa (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あきら | 作成日時:2023年7月8日 12時