めんばさん×めんばさん

2. ページ26

大倉に会えなかった2度目の火曜日。
天気は雨。
今日も花屋を未練がましく夜の８時まで営業したけど大倉は来なかった。

黄｢そりゃ約束はしてへんかったけど、またねって帰ったやんけ｣

アスファルトに打ち付ける激しい雨音に俺の女々しい独り言がかき消される。

通勤に使った車を置いてある駐車場まで傘をさして走っているとき、自動販売機にもたれかかったままずぶ濡れになって座り込んでいる人影を見つけた。

黄｢なんや、酔っぱらいか｣

もともと日本有数の繁華街であるこの街では珍しくない光景だ。

こんな雨の中アホなヤツ。関わりたくない。

とは思ったけど、大倉と最初に会った時もこんな雨の日でこんなシチュエーションだったな、なんて思いだして。

黄｢あの、風邪ひくで｣

気が付けば声をかけていて。

緑｢亮ちゃん‥‥｣

そして、顔を上げた｢アホなヤツ｣が大倉やって気が付いた途端、自分でもびっくりするくらい強引に自分より大きい彼を抱き寄せて、傘の中に引き入れた。

緑｢亮ちゃん‥‥、俺、1人になりたくないねん｣

黄｢やったらうち来たらええやん｣

緑｢一緒におってくれるん？｣

頷いてやったら、大倉はいつものようにふわっと笑ったけど俺は彼の濡れた頬に消えた涙の跡をちゃんと知っている。

　
あれからうちのマンションに大倉を連れ込んで、温かいお風呂にぶち込んだ。

黄｢‥‥‥‥それ、は。は、恥ずかしいやんけ｣

緑｢やって1人にせんって亮ちゃん言うてくれたやん｣

大倉はぺたっと俺について回って、湯船にも俺と一緒に入りたがった。まるで大型犬みたいにウロウロ俺の後をついて回る姿は、可愛いと思わないこともなかったけど
いきなり裸で狭い浴室に2人きり、なんて言うのは恥ずかしくて堪らない。

緑｢ん？照れとん？亮ちゃん、可愛い｣

黄｢ちゃうわ！べ、別に照れとらへん！余裕や！はよ行くで｣

緑｢んー、ありがとぉ｣

2人並んで、これまた狭い湯船に浸かる。

黄｢お前、でかいなぁ｣
緑｢亮ちゃんはガリガリやね。ちゃんと食べてんの｣

何気ない会話をしながら充分温まり、風呂から上がった。

黄｢大倉、飯もう食った？唐揚げと焼きそばと生姜焼きならあるで。全部レトルトやけど｣

緑｢あっはっは、全部茶色やな｣

大声で笑ったあと、それを後悔するみたいな顔になって大倉が言う。

緑｢なにがあったん？とか、どうしたん？とか聞かへんの｣

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