屋上の天使（○赤中心） (ページ10)

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9、side黒

すばるの定期検診を済ませてそのまま当直に入るヒナの代わりにすばるを迎えに病院へ行く。

紫｢ヨコ、頼むで｣

ヒナは何時もの淡々とした口調だったし、すばるもすばるで通常どうり検査終わりの不機嫌な感じだったから俺も普通に接することにした。

本当はヒナからのメールに書いてあったすばるの病状についてヒナに今直ぐ直接問い詰めたかったし、すばる本人にもどんな感じなんか聞きたかった。
でもただの大学生の俺は(医学部だとしても俺にできることなんて今はまだない)
悲しいほど無力で、どんなに代わってやりたいと願ってやってもそれは無理だから。

ヒナも俺もすばるの為にやったら自分の心臓くらい喜んでいつでも差し出せるのに、と溜息をついて車内に流れている音楽のボリュームを上げる。

赤｢あ、コレ、○○○やん。今日リリースやのにもう買ったん？｣
黒｢前、○○○のCDすばるに貸してもらったやん。めっちゃ良かったからそれからチェックしてんねん｣
赤「へぇ～、ヨコに○○○の良さが分かるとは・・・」
黒「どういう意味や！」

んはは、とすばるが笑っていつもの彼も癖でかいらしくグーにした拳が口元に当てられた。

すばるが笑いよる。笑ってくれる。
それだけがただ嬉しくて、同時になんでこんな可愛い俺の弟を神様は酷い目に合わすんやって
涙が零れそうになる。

俺が泣いたところですばるが泣けなくなるだけなのに。

「やっぱりすばるの身体が成長するにつれて心臓の動きが付いていけれんようになって来よる。
少しづつやけれど進行していって現状維持が難しい状態。休学や入院は今直ぐじゃないけどオぺとは関係なくいづれは入院させなあかんかもな。とりあえず薬の種類を強いモノに変えて様子見て、在宅点滴や酸素で対応する」

助手席で楽しそうにメロディを口ずさむすばるの表情とヒナのメールの言葉が全然一致しない。
俺は、ただ前だけを見て運転に集中した。