屋上の天使（○赤中心） (ページ5)

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4、side青ページ5

わぁ！今日も来た！

僕はワクワクしながらそぅっと貯水タンクの後ろから彼が屋上の扉を開けるのを盗み見た(そう、ゲリラライブはいつ始まるか分からないので最近では四時間目のチャイムが鳴るとすぐ弁当を抱えてダッシュで屋上に走っていき待ち伏せしている。すっかりファンやね)

でもこの日の彼は違った。
扉を開けた瞬間、へなへなと座り込んで何故か俯いている。

青「・・・・？具合でも悪いんかな」

そう言えば初めて会った時もふらふらしてたし。貧血とかかも。

でも大丈夫ですかって近寄ってまた噛みつかれても怖いもんなぁ、僕なんか軽くストーカーやし(自覚有)なんてのんびり構えていたら、彼の両ひざが地面について長い黒髪が上下にゆらゆら揺れ始めた。
その額に張り付いた前髪のせいで表情は分からないが貧血なんて生易しい病状じゃないことくらい分かる。

青「ど、どないしたんですか！？」
天使「ッ・・・ん、はっ・・はぁﾊｧ…」

駆け寄ると、青白い額に汗をいっぱいかいて目をぎゅっと瞑って、あの美しい声の代わりに荒い息を吐いている彼。その唇も白くて、左胸のあたりを掴んでいる爪先も白い。

誰がどう見たって、何か持病の発作に間違いない。

青「ど、どぉしよ。取りあえず誰か呼んでくるから・・・それかおんぶして保健室・・いや、救急車呼ぶか？」
天使「・・よ、・・・ッ、よば・・ンっ、はぁ、・・痛ッ・・・ハァハァ」

ぐるぐる考えている間にも彼は回復するどころかどんどん酷くなるようだ。
とりあえず彼から離れずに早く彼を助けるとなれば救急車が一番な気がして震える手でスマフォを取り出した。

天使「呼ぶなッ・・お、お願いやからッ・・はぁ、呼ばんといて」
青「や、でも・・」
天使「・・ハァッ、薬・・・・飲んだらッ、・・ぁ、痛ッ、」

必死で何かを訴えようとしてくる彼のか細い声を拾おうと耳を近づければ、胸ポケットに入っている薬を飲めば治ると言っているのだと分かった。

青「分かった！ポケット触るな？ああ、あった。これ・・・？」

もうヒューヒューと喘鳴しか聞こえてこなかったが、コクコク頷いてくれたので
ちょうど持っていた水の入ったペットボトルと一緒に薬を渡す。

天使「・・・・んっ、んぐっ・・・」

何度か水を吐き戻しながらもなんとか薬を飲み込んだ彼は、一生懸命息を大きく吸ったりしながら必死に呼吸を整え始める。

その骨の浮き出た背中をさすりながら、僕は無責任に大丈夫大丈夫と呟き続けた。