屋上の天使（○赤中心） (ページ27)

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26、side黒ページ27

抱き締めた筈の5歳のすばるがふっと消えて
代わりに腕の中には小学生低学年頃のすばるがいた。

赤｢今日はきれーでおッパイがでかい看護婦さんやとええなあ‥‥｣

この頃のすばるは相変わらず同年代の子供に比べて小柄だったが、それでも身体が成長していくに連れて心臓がそれについていけなくなり、少しずつ通院の回数が増えていった。
投薬が始まりそれの副作用に苦しんだり注射針を怖がったりで笑顔も少なくなった。
それでも本格的な発作は1度もなくて、学校にも通えていたし、こんな風にアホなことを口にして俺は笑ったしヒナは頭をはたいて突っ込んでいた。

そんなことを思い出していたらまたすばるが
残像になった。

次のすばるには会いたくない。

すばるが一気に悪化したのは、両親が他界した小学生４年生の頃で頻繁に発作を起こすようになってついに入院した。

両親を一気に失ったショックが引き金なのか体調も精神面もとにかく不安定なすばるに
当時医大生だったヒナは何かに取り憑かれたようにつきっきりで世話を焼いていた。
まるですばるがヒナに悲しむ暇を与えないかのようにも見えた。

俺はひとり置いてきぼりをくらった気持ちになって髪の毛を金色に染めたりして分かりやすく傷付いて2人から、家族から、逃げた。

赤｢‥‥‥‥、ょこ？よこ？ふふ、よこやぁ｣

真っ白い病室で機械やチューブに囲まれながら眠っていたすばるがこっちに手を伸ばして来て俺の頬をするりと撫でる。

赤｢今日、点滴代えてくれたオネーチャンは絶対ヨコのタイプや。すらっとしてつるっつるやねん｣

紫｢つるっつるってなんやねんな！すばるが言いたいんは肌が綺麗ってことやろ｣

すぱん！とすばるの頭をはたくかわりに汗ばんだ前髪を優しい仕草で掻き分けてやりながらヒナが言う。

赤｢な‥‥、よこ。やからな、明日も来い｣

待ってるから、な？
酸素マスクの奥ですばるが笑う。

これは。
この夢は。
あの頃、すばるの病室には近付かなかった俺への罰かも知れない。