屋上の天使（○赤中心） (ページ23)

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大倉にバイクに乗っけて貰って家の近くに着いた頃には、月は太陽に変わろうとしていた。

おれの家は割と入り組んだ場所にあるから
大通りで大倉に降ろして貰ってたらたら家まで1人で歩く。
ヒナはまだ病院だろうから、おれを待ち構えているのはきっとヨコだ。

どこにも行けるワケでもないし
どこにも行く気も無い。
ヒナとヨコの隣がおれの居場所やから。
ただちょっとホントに気分転換したかっただけ。
大倉に偉そうに危ないゲームは辞めろなんて説教しておきながら無免でバイク乗るのが
気分転換になる、なんてのは違うと思うけど。

でもずっと放課後はぬくぬくと温室みたいな
部屋で家族だけで過ごして来たから
今日は間違えなくおれの青春の1ページで
大事な大事なタカラモノ。

でもヨコとヒナを心配させたことは間違ったことだから、なかなか素直になれないおれだけどきちんと謝る。

って確かに思ったのに

バチンっ！

家に着くなり玄関先に立っていたヨコに思い切り右頬を殴られた。
手はパーで平手打ちだったけど、いきなりだったから結構痛くてその衝動で頭にカッと血が上った。

赤｢いきなりなんやねん！｣

黒｢なんやねんちゃうわ。こんな時間までフラフラなんしてたんや！俺もヒナも一晩中探してたんやで｣

赤｢頼んでへん。だいたいヨコやって昔よぅどっか行って帰って来ぉへんかったやんけ｣

黒｢俺とお前はちゃうやろ！お前は普通ちゃうんやから｣

今度はおれが思い切りヨコの頬をはたいた。
殴ったのも殴られたのも初めてで
ヒリヒリ何もかもが痛い。
元来短気なヨコはおれの胸倉を掴んで来た。
反射的に身を捩り、喧嘩慣れしたヨコが押さえ込んでくる。

紫｢ヨコなにしてん！！｣

病院から早めに帰宅して俺を探し回っていたらしいヒナが顔を真っ青にしてヨコを止める。

紫｢お前、すばるになにしてんのか分かっとんのか！｣

黒｢‥‥ごめん｣

ヨコの言うとおりおれが｢普通｣じゃないから
普通の兄弟喧嘩は一生できずに
いつも悪者はヨコなんだろう。

だから、俯くわけにはいかないと
ヨコのために両足を踏ん張って此処に
立っていないといけないって頭では思っていても。