屋上の天使（○赤中心） (ページ21)

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殴ってでもすばる君を止めなあかん。
そう思っているのにすばるくんの何かを決心したような気迫に一瞬押されてたじろいてしまった。

そのスキにすばるくんは仲間のバイクに跨がって、気が付けばエンジンを吹かしていた。

緑｢ちょっ、気をつけてよ。ほんまに｣

そう祈ることしか出来なかった自分が恥ずかしい。

うわっ！！

歓声に似た悲鳴をあげたのは俺だったのかその他大勢だったのか。
すばるくんは物凄いスピードで崖を駆け上がっていった。

ちょっと‥‥アレやばくねぇ？
落ちるってあんなん！
スピードが普通やないって！

みんな口々に騒ぎ出し、不安と焦りの表情ですばるくんの小さな背中を視線で追っている。
警察沙汰になるかも知れない。
それなのに誰もすばるくんから目を離せない。

キキーッ！！

すばるくんが止まった場所は崖に前輪が少しはみ出した本当にギリギリの場所。
天国の一歩手前。

赤｢おれが優勝ちゃう？｣

皆が圧倒され息を吞んですばるくんをただ見ていたら、ふわり、と地獄からたった今生還した天使みたいに笑ってそう言った。

緑｢‥‥す、すばる君のアホっ！ばかっ！生きてて良かった｣

素直な感想を漏らして駆け寄ればすばる君は真剣な表情でおれの肩に両手を優しく置いた。

赤｢大倉。おまえ、亮の友達やろ？あいつが必死に生きようと病気と闘っとるときに命を遊びにするようなこんなしょーもないことすんな｣

緑｢‥‥‥‥すばる君、俺、｣

赤｢それに、こんな試すようなことせんでもお前はお前なりに一生懸命、いまを、おまえを生きとるやんか｣

な、おおくら。

優しくすばる君が俺を呼ぶから、何故だか
夜明け間近の白い月がやたら眩しくて
目に染みて、涙が出て来てしまった。