屋上の天使（○赤中心） (ページ18)

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ヒナと喧嘩した後、なんとなく1人で家にいたくなくて。
それは多分寂しさとかヨコを早退させてしまった罪悪感とかがぐるぐる胸のうちに渦巻いているからで、思い切って家を飛び出してみた。
三人で思い切り歌えた高揚感から何処までも行ける気もした。

それでも着の身着のまま飛び出すなんてことはせず
少し厚めのパーカーを羽織り薬を全種類持ってゆっくり外へ出た。
おれの住んでいる町は割と田舎で初夏の夜のぬるい空気が運ぶ植物が呼吸する甘い匂いが
とても懐かしかった。
夜出歩くなんて何年振りだろうか。
空には星がきらきら輝いていてその銀河を辿りながらいろいろ考えていたら
心臓に負担がかからないようにのろのろ歩いているわりにずいぶん遠くまで来てしまったようだ。

キキーっ！！！

それに気付いたのは正面からやって来たバイクのエンジンの大きな音のせいだ。
我に返ったおれは驚いたことと、歩いた距離を自覚したことで急に心臓の鼓動が
大きく感じられて思わず左胸を押さえてしゃがみこむ。

緑「ご、ごめんなさい。大丈夫ですか？」

ああ、バイクのお兄ちゃんを心配させてしもうたな。
そう思って顔をあげたらーーー

ヤスの連れのデブ(やないけどちょっとだけぷにっとる)がいた。
こいつ、ドラムやるんやなぁ。
差し出された大きくて骨ばった手を見ながら思った。

それからデブ・・・大倉と。
今日は機嫌がたまたま良かったのか普段から笑い上戸でなつっこい性格なのか
いろいろ話しかけてきて、おれの方はたまたま機嫌が良かったのでいろいろ話した。

緑「あっはっは！すばるくんおもろいな！結構えぐい下ネタも言うんやね。そんな顔してさぁ。
明日学校休みやろ？俺、まだ帰る気ないし。すばるくんもそんな感じちゃう？
良かったら後ろ乗らへん？」

大倉とはくだらない話ばかりで盛り上がって、ひとつもシリアスな話なんかしなかったのに帰りたくないのは察せられたみたい。以外に鋭いヤツ。

赤「ん～～・・・」

時刻を確かめるためにスマフォを出せば、ヒナとヨコから嵐のような着信とライン。
というか待ち受けのデジタル時計の数字をちらっと見る間にも着信。
もうちょっとだけ現実逃避したいな、なんて。
二人の兄の気持ちを微塵も考えず、今日だけは神様許してください、と勝手に祈って

「ごめん。元気やから。もう少ししたら帰る」

とヨコに文字を打った後にスマフォの電源を落とした。