14、side赤 ページ15
黄「村上くんに怒られへんかった？」
赤「ん、余裕やで」
本当は検査結果を聞きに行ったとき、家に帰ったら話がある、と事務的に告げられた。
八重歯を伸ばして怒鳴られる方が幾らかマシなくらいヒナは怒ってると思う。
でも、酸素マスクをつけて一生懸命肩で呼吸しながらも、おれのことを一番に心配してくれる
亮にそんなことは言えなかった。
赤「また歌おうな」
黄「む、らかみくんが、ハァ、休みんとき・・」
赤「ん、ヒナのシフトメールするな」
黄「ふっ、あかんやんそれぇ、ふふっ・・・ハァはぁ、なぁ、すば、るくん・・」
酸素マスクを取ろうとする細い指を慌てて止めて、酸素マスク越しの色のない唇にそっと耳を近づける。
不規則に白く曇る酸素マスクがふにゃっとした亮の笑顔に全然似合わなくて泣きそうになった。
ヒナやヨコの気持ちもおれは分かる。
赤「なん、聞こえとるよ」
黄「す・・・ばるくんと、しょぅちゃんと、お、おくらがライブしたら絶対見に行くからな・・・」
赤「アホか。見に行くもなんもおまえもメンバーやんけ」
黄「・・・・そっかぁ」
安心したように亮が目を閉じる。ヒナが呼びに来るまでおれはずっと亮の病室にいてまたその手を握り続けた。色の戻らない爪先が悲しかった。
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帰宅するとヒナと二人きりだった。
気まずさからヨコの姿を探してキョロキョロしていたら、ヨコならバイトやでとヒナに見透かされた。
赤「・・・・ゴメンナサイ」
単刀直入謝ってしまえばヒナの怒りもちょっとは収まるかも知れない。
紫「主治医として亮の詳しい病状を言うわけにはあかん。でもお前も分かるやろ？初夏や言うても夕方の冷えた空気がただでさえあの子の肺に悪いことくらい。それを腹式呼吸で取り込んだらああなる。可愛そうに、あと１週間はしんどいやろなぁ」
赤「それは・・・ほんまにすまんかった・・・」
紫「すばるもや。４０分も大きい声出し続けるやなんて無茶苦茶心臓に負担かかるに決まってるやろ」
赤「大きい声って・・ただ歌ってただけやん」
紫「だけな。普通の人にとってはそうかもしれへんけど、すばるにとってはだけやないやろ」
赤「でも平気やったやんけ！検診でも異常ないって！！」
紫「大きい声出すなよ。そうやって興奮されたらマトモにこっちも意見言えなくなる。なんか飲んで落ち着きや」
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作者名：s1117 | 作成日時：2018年12月18日 19時
