屋上の天使（○赤中心） (ページ12)

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11、side青ページ12

あれから一か月ー・・・
毎日屋上に行っているけどすばるくんの姿は一度も見ていない。
すばる、という星の名前は素敵でとても珍しい名前だから誰かに聞けばすばるくんのことは容易く分かるだろうけど(というかあのルックスにしても態度にしても目を惹かないわけないし)
そうしたくない自分がいた。

あーあ、そろそろ彼の声を聞きたいなぁ。ワンフレーズでトリップできて、すぐに聞きたくなるまるで純度の高い麻薬みたいな彼の声。

放課後、僕と大倉二人だけで立ち上げた軽音部の小さな部室で、この感傷的な気持ちを大倉のスピードフルなドラムでますます高ぶらせた。
そのテンションで急に亮に会いたくなった。
彼も僕が愛した音の持ち主。

でも、彼のギターの繊細な音色には勿論、亮の垂れた大きな瞳とか掠れた声にも会いたくなってしまって連絡も入れずに彼がいる病院に足早に向かった。

黄「～～～♪～～～♪」
赤「・・・もー、1人で歌うん飽きた。亮もギターばっか弾いてへんと入って来てや」
黄「！！いやや・・・・」
赤「なんでや」
黄「ここはすばるくんの声で絶対聞きたいねん！ここと、ここは！あと、ここも！」
赤「んはは、もぅ全部やろソレ。しゃあないなぁ、亮ちゃんは」

病院の中庭のベンチから、楽しそうで、そして、酷く懐かしい声が二人分響いてきた。
じぃっとその2人ぶんの背中を見詰めていたら、敏い亮が振り向いて、章ちゃんと俺を呼んだ。

黄「章ちゃん！」
赤「・・・チビ」
青「久しぶり、すばるくん。亮は３日振り・・やんな？」

僕らは３人揃って知り合いやったんか、と嬉しくなった。
最も、嬉しくなったのは僕と亮だけで、すばるくんは僕の姿を見た瞬間、そろそろ中に入るわ、と言って立ち上がった。

黄「なんでや、すばるくん。来たばっかやんけ。まだ帰らんといて」
赤「ーっ、りょう？」

亮がそんなことを言うのは珍しくてすばるくんも思わず振り向いて足を止める。

黄「章ちゃんもギター持って来とんやろ？３人でなんかしようや」

すばるくんは困ったようなぎこちない笑顔を浮かべながら、ええで、と頷いたので僕もすばるくんの気分が変わらないうちにギターを取り出して試し弾きを軽くする。
さっきまで散々掻き鳴らしてはいたけれど、すばるくんと亮とってなれば緊張も最高潮。
わくわくも期待も最高潮。