屋上の天使（○赤中心） (ページ11)

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10、side黒ページ11

10、side黒

帰宅して、向かい合って夕飯を食べる。ヒナが出勤前に用意してくれた具だくさんの鍋焼きうどんと魚の煮つけ。
すばるのは塩分濃度の関係で煮つけが焼き魚に変更されている。

あかん、どうしてもすばるから目を逸らしてしまう。
中学にあがる前の一番しんどかったすばるを思い出してしまって苦しくなるけど、すばるはもっと心身ともにしんどいんだから、と自分を奮い立たせて敢えて「それ」に触れてみる。

黒「なんか・・・それつけてんの久しぶりやなぁ。やっぱ楽なんか？」
赤「それ？ああ、酸素チューブ。楽やけど邪魔や、プラプラなる」

学校へつけていくのは断固拒否やったらしいけど自宅だけなら、と、しぶしぶ了解して今日から薬の効果が出るまですばるは在宅酸素を始めた。
流す酸素は一番低い数値らしいし念の為や、とヒナは言うけれどこういう目に見える悪化はきっとメンタル的に来るだろう。

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日付が変わるその前に俺はすばるの寝室に勝手に入った。夜間発作が心配だからという理由をつけて高校までは俺と一緒に寝てたけれど、さすがに高校になると1人部屋が良いと譲らなかったので
ナースコールみたいなモノをヒナが取りつけて今はすばる念願の1人部屋。
兄ちゃん寂しいわ。

黒「・・・・・すばる～」

布団の中で蹲り丸くなって嗚咽が漏れないようにブランケットに顔を埋めているすばるの頭を撫でる。

黒「検査頑張ったなぁ、酸素もつけててえらいなぁ。すばるはほんまええコや」

小学生に言い聞かせるようなかみ砕いたものの言い方に食って掛かってくるかな、と思えば今日のすばるは思いのほか素直で、うん、と小さく頷いた。

赤「・・・・ふっ、なんで・・・おれ、ばっかり・・・。してへんのに。ヒナの言うことちゃんと聞いて、通学も車やし体育は見学してるしバンドやってやってへんし、水分制限や食べ物も気ぃつけてんのに・・・なんで、悪なるん・・・いやや、怖い・・・」

バンド？すばるバンドしたいんか？音楽好きやもんなぁ。

背中を撫でてやりながら相槌を打てば引っかかる箇所があり思わず聞き返しそうになったけど
流しておいた。
だってバンド活動なんか許可してやれる訳やないし。
その代わり、ブランケットに顔を埋めたまましゃくりあげ続けるすばるを思う存分泣かせてあげた。
まだ俺は医者じゃないから。
呼吸が苦しくなるから泣きやみ、とヒナみたいに言わなくていいから。