107.心の奥 ページ8
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智「で…、Aさんは翔くんのことが好きなんだね？」
A「、っ、え」
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しんみりした空気をあっけなく壊して、大野様が不敵な笑みを浮かべている。
私の顔を覗き込むようにして丸い目を何度も瞬く。
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智「ちがうの？」
A「それは、その」
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まるで私からの質問は受け付けまいとでも言うかのように、わざと話題をすり替えたのかもしれない。
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A「…お慕いしております」
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素直に「好き」と言葉にしてしまうには、どうしても後ろめたくて。
つい昨夜ついた自分への嘘。
それを思い出すと、どうしてもそのままを口にするには勇気が必要だった。
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智「なるほどね…(笑)」
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このまま自分に嘘をついていれば、もしかしたら自己暗示がかかってそのとおり…、私は雅紀くんを想うことができるかもしれない。
彼との時間が増えれば、もしかしたら…。
そう思って、「逃げ」を選択した。
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もう安易に翔さまへの想いを口にしてはいけないと、思う。
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A「翔さまは、まったく私のことなど見ていないんですけどね」
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渇いた笑い声が自分の喉から漏れた。
私は大野様と目が合わせられなかった。この人はどこか、和也に似ている。
人の心のうちを見透かしてしまいそうな、そんな瞳で、私の想いを簡単に捉えてしまう。
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そんな気がした。
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智「そう？…俺、翔くんとそういう話したことないからわかんないけど…。翔くんの性格なら、君のこと気に食わないならとっとと婚約なんて解消してると思うけどなあ」
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じわり、と焦る感覚を覚えた。私はこの感覚を知っている。
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大野様はお世辞を言っているような雰囲気ではない。
ふんわりと笑って、私の反応を待っている。
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キリキリと、この心臓が戸惑いを見せ始めた。だめなのに。
どうして皆、私と翔さまの空気に触れたこともないのに、簡単に期待させるような言葉を発するのだろうか。
私は自分で思っているよりも単純だから、無意識のうちに期待をしてしまう。
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また、
自分へついた嘘を簡単に裏切りそうになる。
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きらら(プロフ) - 久しぶりに読んだら感情移入してしまいました。すごく大好きな作品なので更新楽しみにしています！ (2019年1月12日 12時) (
レス) id: 0544cbd4fc (このIDを非表示/違反報告)
カシューナッツ★(プロフ) - 留学から帰ってきて占ツク開けると恋袮さんの名前を見つけ飛び上がりました(^^)お話楽しみにしています。 (2017年10月13日 19時) (レス) id: 6d2e89ecd7 (このIDを非表示/違反報告)
ゆか(プロフ) - 待っていました！次の更新、楽しみにしています！ (2017年8月13日 1時) (レス) id: 47bb01bdbb (このIDを非表示/違反報告)
智紗(プロフ) - おかえりなさい！お待ちしておりました！更新すごく嬉しいです。ありがとうございます！これからも応援しています。 (2017年8月11日 2時) (レス) id: 4da0f714f9 (このIDを非表示/違反報告)
希実(プロフ) - 待ってました！この作品の続きが読めること大変嬉しく思います。これからも恋袮さんのペースで作品を書き続けてください。応援してます。 (2017年8月11日 2時) (レス) id: 23ab8c274f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：*
| 作成日時：2015年9月19日 21時
