84.相違 ページ10
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おかえりなさい。とそう言って出迎えてくれたのは梅で。
実家へ帰省したときと同じように、櫻井家に帰ってきたときも隣で松本が荷物を持っていてくれた。
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国龍家を出る前、
またいつでも帰ってきてくださいね、とばあは少し寂しそうに言っていた。
和也は不安げに私を見つめて、「好きなようにすればいいんじゃん？」と笑ってくれた。
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A「松本、ありがとう。部屋まで運んでくれて…、助かった(笑)」
松本「いえ。お気になさらず」
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相変わらず暑そうな格好をした松本が、小さく微笑んで会釈をした。
仕事へ戻った松本を確認して、部屋の前まで運んでもらった荷物を手に取った。
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荷物をはやく片付けようと、障子を引いたとき
突然、ぽん、と肩を掴まれて、聞こえた声は気だるそうな貴方の声。
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翔「この前…雅紀がお前に会いに来てた」
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いきなり現れて、言われたのはそれだけで。
それを言うためにわざわざ？と私は心の中で首を捻る。
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翔「…あのさ」
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言葉を続けた翔さまの声に耳を傾けた。
大きな目が私を見ている。
ドキドキした。
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A「…？」
翔「…」
A「どうしたんですか？」
翔「…いや、なんでもねえ」
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見惚れるようにして見つめていた大きな目。逸らされた視線のせいで、自分がずっと翔さまを見ていたことに気がついて恥ずかしくなった。
肩からするりと離れた手は、思っていたよりも強く肩を掴んでいたんだなと、離れて軽くなったソコに感じる。
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視線を外したままの翔さまに、それじゃあまた…とその場の別れを告げ
中途半端に開いた障子をもう一度引き、荷物を先に押し込んだ。
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てっきり背を向けたときにはもう翔さまは部屋へ戻ってしまっているのだと思っていた私は、
障子を閉めようと振り返ったときにまだ在ったその姿を捉えて、ひゅっと息を呑んだ。
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翔「A」
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見上げた先には合わない視線。
眉間に寄った少しのシワ。
翔さまはもどかし気に私の名を呼んだ。
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A「…はい…。？」
翔「お、…………おかえり」
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一瞬、息が止まったのかと思った。
ハッとして、慌てて翔さまの表情を伺うと、なんとも言えないような顔をして
チラと、私を見た。
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A「…た、…ただいまです」
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作成日時：2014年3月16日 18時
