80.仏頂面 sideA ページ6
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胡坐を掻いた翔ちゃんが、何か言いたげに何度もお茶を啜る。
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翔「…」
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きっと
俺と、Aさんのことだと思うけれど。
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雅紀「ねえ」
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そんな美味しくないお茶、何度も飲まなくたって(笑)
こんなにもわかりやすいはずなのに。
俺は、こんな翔ちゃんを見たことが無かった。
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雅紀「俺は…Aさんのこと好きだよ」
翔「…っ、…なんだよ、急に」
雅紀「翔ちゃんは？」
翔「は…？」
雅紀「翔ちゃんは、好き？Aさんのこと。お嫁さんになる人でしょ？」
翔「…」
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ずっとヘラヘラ笑っている俺の表情が気に食わないのか
寝転んだ俺を見下ろし、彼は小さく舌打ちをした。
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翔「…嫁とか…、勝手に決められたことだし」
雅紀「うん？」
翔「俺は、…全然…、好きとかじゃねぇけど」
雅紀「…でもAさんは、…翔ちゃんのこと好きだよね」
翔「それは…」
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“鬱陶しいだけだ”と
そう言って目を伏せる翔ちゃんは
嘘をついているのか、本当のことを言っているのか
やっぱ俺にはわかんない。
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雅紀「なら俺が…もし、」
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俺は、翔ちゃんのことも、Aさんのことも好きだから。
もしこの質問に、翔ちゃんがAさんのことを「好きだ」と答えてくれたなら
身を引いて、ふたりのために尽くそうだなんて、良い人になろうとしていたけれど
嘘にせよ、誠にせよ、翔ちゃんがそういう風に出るのなら
俺だって、簡単に手を放せないよ。この恋から。
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雅紀「もし、…Aさんを奪っちゃっても、前みたいに邪魔とかやめてよ(笑)」
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作成日時：2014年3月16日 18時
