97.駆け引き ページ23
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どうして、また今になってそんな質問をするのか理解できなかった。
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翔「お前は、しきたりとかそういうのを気にしてるのかもしれねぇけど、正直そんなもんは形だけだ。どうしようもないなら言えばなんとかなるもんだ」
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翔さま、それは暗に“お前とは無理だ”と言っているのでしょうか。
貴方はもう私とは一緒にいるのすら不愉快ということでしょうか。
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翔「もし、お前が雅紀との交際を考えているなら俺は好きにすればいいと思ってる」
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いつにも増して口数の多い翔さまの表情は、ここからじゃ見えない。
言葉とは反対に翔さまの背中はあたたかくて心地がよかった。
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翔さまは、好きにしろと言っている。
私が翔さまの傍にいたいと思って、今もこうしてなんとか隣に並んでいるけれど翔さまは突き放すような言動ばかりで、いつまでも距離は遠いまま。
好きにしろと言いながら、本当は一刻もはやく私のことを遠ざけたいと思っているのではないか。
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翔「…なあ、どうしたい？」
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私に問いかけておいて、雅紀くんを選ぶように促しているのでしょう。ねえ、翔さま。
こんなに近くにいるのに、どうして、どうして私の想いはいつまでも貴方と向き合わないの。
私、翔さまに突き放されるたび、貴方にいらないと思われていると感じるたび、もうこの胸が張り裂けそうなの。
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私は、このまま貴方のことを好いていていいのかしらって、ずっと、困ってるの。
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私、貴方のことしか好きになったことがない。
貴方のことしか知らない。
貴方が突然目の前にポンと現れて、私から恋心まるごと掻っ攫っていったんじゃない。
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いつからだろう。
いつから、私のこの胸は、ずきずきと疼いて治らないままなんだろう。
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もう、くるしいんだよ。
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さっきより近くなった花火の音。
ああ、もうすこしで家についてしまう。そうしたら、また、心だけでなく身体も貴方から離れないといけなくなってしまう。
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熱くなる瞼のうらに知らないふりをして、ぎゅっ…と、翔さまの前でつないでいた手をさらに強く握った。
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作成日時：2014年3月16日 18時
